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岸博幸のクリエイティブ国富論

ルネサスという“都合のいい女”

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第201回】 2012年9月28日
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 あるところに“都合のいい女”がいました。ちゃんと自立して働いている一方で、妻子ある男に甲斐甲斐しく尽くしていました。ところが、この“都合のいい女”は男に尽くし過ぎて借金を作ってしまい、生活に困窮するまでになってしまいました。

 男の経済力なら借金を肩代わりできなくもないけど、少しまとまった金なので出したくない。そこで、その女に「とりあえず実家に何とかしてもらってくれ」と言っているうちに、アメリカ人の金持ちの男が現われました。

 そして、女はその男に対して「アメリカ人から、あなたと手を切るなら借金は全部払ってやろうと言われた」と告げました。すると、このままでは“都合のいい女”を手放すことになると焦った男は、なぜだか役所に泣きついて「あの女はじつは日本の宝なんだ。あの女をアメリカ人にとられると日本は大変なことになるんだ」と言いました。

 世間知らずの役人は、それは大変だと、国とその男で女の借金を肩代わりすることを真面目に考え始めました。

“都合のいい会社”を
存続させる構図

 自動車・家電に欠かせないマイコンで世界最大手であるルネサスエレクトロニクスが経営不振に喘ぐ中、米国の投資ファンドKKRが1000億円の出資を提案していましたが、先週になって突如、政府系ファンドの産業革新機構とトヨタ、パナソニックなどメーカー大手で2000億円の共同出資を検討という報道が流れました。

 自動車や家電の大手がマイコンの安定調達を続けるためには、ルネサスを国産企業として残し外資に渡すべきでない、という論調になっていますが、実態は、ルネサスはまさにこの“都合のいい女”そのものではないでしょうか。

 即ち、今回の共同出資の構図を客観的に考えると、安値で特注マイコンを製造してくれる、自動車・家電メーカーにとって“都合のいい会社”としてのルネサスを維持したいという要望に応え、産業革新機構のカネで外資のKKRに経営権が渡ることを阻止するのが狙いだからです。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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