女子児童が旅行カバンに押し込まれ、タクシーで連れ去られそうになった事件、男性が名古屋で自宅に女児を監禁した後、発覚を恐れて父親を殺害した事件。9月には、子どもを狙った衝撃的な犯罪がいくつも報道された。後先を考えない安易とも言える犯人の手口には、気味悪ささえ感じられる。「もはや今までの常識では子どもを守れない」と、強い危機感を抱いた親も多いだろう。これらの事件などを機に、改めて子どもの防犯についての意識が高まっている。子どもをとりまく犯罪の現状はどうなっているのか。また、子どもを“魔の手”から守るには、どんな心構えが必要なのか。徹底検証してみたい。(取材・文/プレスラボ・小川たまか)

常軌を逸した事件の続発に親は戦々恐々
でも子どもを狙った犯罪は増えていない?

 広島市で小学校6年生の女子児童が大学生の男に旅行カバンに押し込まれ、間一髪でタクシー運転手らに助けられた事件が起こったのは今月4日。その前日には、23歳の男性が名古屋で自宅に女児を監禁した後、発覚を恐れて父親を殺害する事件が起こっている。

「もしも仕事中に、自分の子どもが何者かに連れ去られたら……」「毎日1人で登下校させている娘や息子は大丈夫だろうか……」

 子どもを狙った衝撃的な事件が連続して起こったことから、こうして強い危機感を持った親は多かろう。子どもの安全について、改めて対策を講じる学校や塾も多い。

 子どもをとりまく犯罪の現状はどうなっているのか。また、常軌を逸した「魔の手」から子どもを救うには、どんな心構えが必要なのか。本記事では、それを徹底検証してみたい。

 さて、冒頭から拍子抜けするかもしれないが、実は子どもを狙った犯罪が最近になって増えているというデータがあるわけではない。まずはその現状を紹介し、それを前提に話を進めよう。

警察庁が発表している統計によれば、子どもが被害に遭った強制わいせつは、2001年の2037件から2006年には1015件へと半減し、その後は2011年まで1000件前後を推移。わいせつ目的略取誘拐(わいせつ目的で未成年者を誘拐すること)についても、2001年から2011年まで、25件~56件の間を推移している。