部署間の調整業務など、彼らがあまり得意ではないことまでやらせようとする。いわゆる根回し、露払い(あらかじめ想定される障害を取り除いておくこと)、開発に必要なリソースの確保等は、会社経験の長いリーダーこそが強みを発揮できる領域である。エンジニアやデザイナーが自身の得意なことに集中できるよう、リーダーは先回りして動くべきだ。

 1点付け加えると、仕事が面白くない以前に、仕事そのものが少なければ彼らはすぐに辞めてしまうものだ。成長意欲が高い人材は「仕事が少なくてラッキーだ」と考えるよりも「張り合いがない」「成長の機会が少ない」と焦りを感じるのだろう。

 デザインやエンジニアリングの業務量には多少の波があるだろうが、できる限りエキサイティングな仕事をどんどん与え、常に手を動かしている状態にすることが重要だ。

 たとえば、既存事業の改善プロジェクトに、UI/UX改善や顧客理解の観点からデザイナーを参画させるのも一案だろう。このとき、既存の事業部にただメンバーとして参加させるのではなく、責任ある立場として入ってもらい、部門横断で周囲を巻き込みながら、UI/UXの理解やノウハウの移植を狙うとよい。

 その他にも、新規事業プロジェクトに参画させる、チーム作りを任せるなど、できることはたくさんある。デザイナーを単なるウェブサデザイン制作要員のようにとらえず、より多くの役割を任せるとよい。

(3)「給与や待遇が折り合わない」への対処法

 次に、給与や待遇が折り合わないという問題について考えたい。BCGDV東京オフィスでプロダクトマネージャー(PM)をまとめている中尾憲一によると、PMは日本の大企業に行くメリットを特に感じにくいという。前回の記事で、PMという職業がGoogleなどの海外テック企業においては「スター職種」の1つであると述べたが、日本企業の給与体系では、責任範囲と報酬のバランスが折り合わないのだ。

 とはいえ、既存の給与体系を根本的に変えるのは難しい面もあるだろう。対処法の一例としては、本社からは独立したガバナンスで動ける「出島」を設け、本社とは異なる給与体系を用意する、あるいは、正社員ではなく契約・嘱託などの雇用形態を活用して、能力に見合ったインセンティブを与えることなどが考えられる。