ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
ミャンマー その投資ブームは本物か

突然賃金水準が50%上昇し、デモも発生!
民主化が進むと高まる工場運営の意外なリスク(4)

杉田浩一 [株式会社アジア戦略アドバイザリー 代表取締役]
【第10回】 2012年10月11日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

前回は、医療用精密器具のトップメーカーのマニー株式会社の、ミャンマー進出後に直面した進出後の工場での運営における労務管理や、それに伴う労働局とのやり取りについてご紹介した。今回は、電力事情や現地政府との付き合い方、最近の賃上げの状況等、現状の工場運営における基礎条件に焦点を当てたい。

海外展開の中のミャンマーの位置づけ

 現在、マニーは彼らの主力製品の一つである手術用縫合針や歯科用根幹治療機器の加工作業を、ミャンマー工場で行っている。いずれの製品も医療で使うものだけに不良品は許されず、微細な加工プロセスにおいて高いレベルの品質を常に維持する必要がある。マニーは、ミャンマーでそれを実現するために、どのように日々の工場のオペレーションを行っているのだろうか。

 今回も、松谷貫司会長、そしてそれを実務面からサポートしてきた高井壽秀副社長、榎本勲MANI YANGON LTD社長にお話を伺った。

 日本企業で最初の海外進出先にミャンマーを選択する企業は少ない。中国などの国々で既に事業を展開していく中で、第二、第三の海外拠点の一つとしてミャンマーを検討する場合がほとんどであろう。海外事業の展開戦略の中でどのようにミャンマーを位置付けることが妥当なのだろうか。他の海外工場と、どの程度、どのように連携を構築することが望ましいく、ミャンマーはどのような役割を担うべきなのだろうか。

*  *

――貴社の海外戦略の中で、ミャンマー工場の位置づけは。貴社は日本、ベトナム、ラオスに工場がある中で、現在ミャンマー工場での製造対象品目に、手術用縫合針や歯科用治療機器選んだ理由は。製造工程上の特徴等を考えてですか。

松谷会長 今まではどの工程もベトナムでやっていたのですが、より効率性を追求すると一部製造工程はミャンマーに移すほうが良いと分かりました。ミャンマーで製造している製品については、実はミャンマー工場を作る時にその製品の増産がどうしても必要だったからで、何をどこで製造すると最適かは、それほど考えていませんでした。

高井副社長 ミャンマーの場合だと、国の状況に鑑み、そこへ過度に依存するのはリスクが高いので、部分的な工程しか今までやってきませんでした。従って特定の製品の全ての工程というよりは、ベトナムの一部分の工程をミャンマーで、あるいはラオスに移管してやっています。

松谷会長 また最近は、重要度に鑑みこの製品であれば、全工程ミャンマーだけでいいのではというケースも出てきています。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

杉田浩一 [株式会社アジア戦略アドバイザリー 代表取締役]

すぎた こういち/カリフォルニア大学サンタバーバラ校物理学及び生物学部卒。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)経済学修士課程卒。15年間にわたり複数の外資系投資銀行にて、海外進出戦略立案サポートや、M&Aアドバイザリーをはじめとするコーポレートファイナンス業務に携わる。2000年から2009年まで、UBS証券会社投資銀行本部M&Aアドバイザリーチームに在籍し、数多くのM&A案件においてアドバイザーを務める。また、2009年から2012年まで、米系投資銀行のフーリハン・ローキーにて、在日副代表を務める傍ら東南アジアにおけるM&Aアドバイザリー業務に従事。2012年に、東南アジアでのM&Aアドバイザリー及び業界調査を主要業務とする株式会社アジア戦略アドバイザリーを創業。よりリスク度の高い東南アジア案件において、質の高いアドバイザリーサービスの提供を目指してASEAN各国での案件を遂行中。特に、現地の主要財閥との直接の関係を生かし、日系企業と現地企業間の資本・業務提携をサポートしている。ミャンマーにおいては、大手事業会社、総合商社、金融機関等の進出戦略立案及びその実行サポートに携わる一方で、2012年よりダイヤモンド・オンライン(Diamond Online)にて、3年間にわたり人気コラム『ミャンマー その投資ブームは本物か』『海外戦略アドバイザー杉田浩一が徹底解説 ミャンマービジネス最前線』を連載。


ミャンマー その投資ブームは本物か

民主化へ一気に動き出したミャンマー。政治体制の不安定さや民族間の紛争など、ミャンマー特有のリスクは依然として残るものの、欧米による経済制裁が解除されつつあり、世界中の企業が東南アジアの「ラスト・フロンティア」として注目している。現地では電力をはじめとした社会インフラに関する大型投資案件、工業団地の造成が急ピッチで進められている。日本企業も、成長の糧をミャンマーに見出そうと、熱い視線を注いでいる。しかし、ブームとなっているミャンマー投資は、果たして本物なのだろうか。ブームに踊り、現実を軽視した、拙速な投資へと急いでいないだろうか。現地取材を敢行し、冷静な目でミャンマーの現実をレポートする。

「ミャンマー その投資ブームは本物か」

⇒バックナンバー一覧