建材中のアスベストを調べる国際標準規格(ISO)の分析法と日本独特の日本工業規格(JIS)分析法をめぐって、国際的な評価と国内のそれがまったく違っていた――。本連載では、この驚くべき問題について、日本政府と一部の専門家の身勝手、且つ支離滅裂な主張を明らかにしてきた(第2回第3回第4回)。本稿では、これら2つのアスベスト分析法について、誤解を招きかねなかった内容を整理するとともに、関連する事実関係、今後のJIS法のあるべき姿について追補する。

JIS法が「不正確」な理由

 建材中にアスベストが含まれているかどうかを調べる「定性分析法」の国際規格(ISO22262-1)が7月1日に発行された。このISO法に日本が提案してきたJIS分析法が採用されなかった理由は、日本側が主張するように時間的な余裕がなかったなどということではなく、「不正確」な分析法と判断されたからだった(詳述本連載第2回第3回第4回)。

 これがどのように「不正確」なのか。一部で若干誤解があったようなので改めて解説する。

 7月1日に発行されたISO法は、実体顕微鏡と偏光顕微鏡を組み合わせた欧米式の分析法を採用した。一方、今回採用されなかった、日本が提案していたJIS法は、X線回折と、偏光顕微鏡の一部の機能だけ備えた位相差分散顕微鏡を組み合わせた日本独特の方式だ。

 基本的にはすでに報じたとおりだが、JIS法の精度に問題があることを以前から指摘してきたNPO「東京労働安全衛生センター」の外山尚紀氏の言葉を借りれば、「JIS法は(アスベストが建材に含まれているのを見逃してしまう)『フォールス・ネガティブ』と(その逆にアスベストが含まれていないのに含有ありと誤判定する)『フォールス・ポジティブ』のどちらも起こしやすい」分析法である。

 とはいえ、いくら「不正確」なJIS法でも、なんでもかんでも間違えるというわけではない。