鉄道各社の狙いは
省力化とコスト削減

 鉄道各社がチケットレス化を推進するのには二つの理由がある。ひとつは労働人口の減少に備え、駅オペレーションを省力化するため。そしてもう一つは磁気券を廃止し、券売機や自動改札機の非接触化を進めることで、イニシャルコスト・ランニングコストの削減を図るためだ。

 磁気券を扱う券売機や自動改札機は精密機器の塊であり、1機1千万円ともいわれるイニシャルコストがかかる上、定期的なメンテナンスが欠かせず、ランニングコストもばかにならない。

 SuicaやPASMOなどICカードの普及により、首都圏のJR・私鉄でIC専用改札機が増えているのも、IC専用改札機は読み取り部だけで動作するため、大幅なコストダウンが可能という背景がある。

 しかし、1回限りの磁気乗車券や回数券、中長距離の磁気乗車券が残っていては、従来の券売機、自動改札機を完全になくすことはできない。そこで、磁気乗車券の担当範囲を縮小していこうというのが現在の取り組みの根底にある考え方だ。

 磁気乗車券の完全な廃止にはまだまだ多くのステップが必要になるが、当面のターゲットになるのは回数券と中長距離乗車券のチケットレス化だ。JR東日本は今年3月1日から、Suicaで同一運賃区間を月10回以上利用した場合に、1回分の運賃がポイント還元され、以降は毎回運賃の10%がポイント還元されるサービスを開始した。

 JR西日本も2018年10月から利用回数に応じてポイントが還元される「ICOCAポイントサービス」を提供しているが、10月1日からポイント還元率を引き上げるのに伴い、ICOCAエリア内の普通回数乗車券の発売を終了すると発表した。JR東日本も将来的には回数券廃止に踏み切るものと思われる(新幹線回数券は既に廃止が決まっている)。