いまや情報の収集より選別こそが重要な時代だ。日々のニュースや話題のチェックもさることながら、ソーシャル・ネットワーク(SNS)でつながる人が増えるにつれて、新たな書き込みに目を通すだけでもけっこうな労力になってくる。洪水のような日々の更新から真に価値あるものだけをざるでこして読むことができたら……、と願っているのは筆者だけではないだろう。

 そんな人には、Flipboardが強い味方になる。ウェブサイトのRSSフィードや、FacebookやTwitterをはじめとするSNSにも対応したiOS/Android用RSSリーダーで、これ一つでオンラインメディアからSNSまで、日々の更新チェックを済ますことができる。

 こうしたSNS対応型RSSリーダーとしてはYomore(ヨモア)All SNSCheckerなどいくつかあるが、Flipboardがこれらと一線を画すのは、画面表示の美しさへのコダワリと、自動アルゴリズムによる選別で重要な記事を提示してくれる「Cover Stories」という機能だ。

話題の7インチ級タブレットで読みたい<br />「雑誌の誌面のように美しく見せる」Flipboardの真価を考えるスマートフォンで見る場合には、片手ですべての操作が行えるよう、親指での上方向のスワイプでページがめくれるようになっている。こうした「かゆいところに手が届く」作り込みのよさは、かつては日本企業のお家芸だったのだが。

 Flipboardは、ウェブコンテンツを「雑誌の誌面のように美しく見せる」ためのアプリというとらえ方が一般的だ。Flipboardに最適化されたRSSフィードを読み込むことで、まるで雑誌のページのように写真と文字が美しくレイアウトされた状態で表示される。7インチ級タブレットの選択肢が増えている昨今、Flipboardの作り込みのよさは、強力な魅力となるだろう。さらに、Flipboardはより雑誌らしく見せるために、広告表示についてもFlipboard内に織り込めるように、実際の雑誌と連携した動きを強めている。(参考記事1参考記事2)。

 しかし、Flipboardでは、雑誌のウェブコンテンツだけでなくSNSなどのRSSフィードも閲覧できる。さまざまなコンテンツが「Cover Stories」の選別機能によって、自動で選別されて並べられ、「自分だけの雑誌」を読む感覚で読みすすめられるのだ。しかも選別アルゴリズムには学習機能があり、使えば使うほどに自分好みに仕上がっていくことになる。

 さらに、読むべきコンテンツを自動アルゴリズムで選別するのみならず、人とのつながりによっても選別していく。雑誌だけでなくSNSをカバーしていることについて、同社では「SNSでつながった人々があなたのキュレーターになるから」(Flipboardの広報担当Christel van der Boom氏)と説明する。実際、Flipboardでの閲覧の25%は、他のコンテンツを見ていての「脇見」だという。

 Flipboardがウェブの情報を読むプラットフォームとして力をつけていくと、雑誌なみのクオリティで表示されたコンテンツが、プロアマの区別なく同じ俎上に並ぶようになる。こうした仕組みがコンテンツの切磋琢磨を促し、ますます良質な情報を得やすいツールとなっていく。

 とはいえ、Flipboardはまだまだ成長途上のアプリだ。RSSリーダーとしては、例えばGoogleリーダーに登録したサイト群から一部だけを選んで表示する、といった他のアプリならできる機能が欠けているし、「誌面と同じように美しく」閲覧できる記事も、現状ではほんの一部にとどまる。RSSフィードの最適化は記事を配信する側の手間によっている。普及との兼ね合いで及び腰のメディアに対し、アマチュアにとっては、いち早く対応することで、先行する機会にできるかもしれない。

(待兼音二郎/5時から作家塾(R)