個人投資家の話が
「参考になる」といえる理由

 さて、ここまで述べてきたようなプロとか専門家と言われる人以外でも意見を聞く価値のある人は居る、と筆者は考えている。それは特定の職業ではなく、個人投資家の中にそういう人たちがいるのだ。

 筆者はオンライン上のコミュニティーにもいくつか参加しており、そこで個人投資家の意見交換みたいな機会にも出ることがあるが、名前も知られていない普通の個人投資家の中にも投資で数億円とか数十億円の資産を築いた人がいるのだ。

 そういう人たちの体験談や投資に対する考え方、あるいは自分なりのルールというものを聞くことは、非常に参考になると思う。なぜなら彼らの言うことは机上の空論ではなく、実際に自分が体験してきたことだからだ。

 投資や資産運用のプロと言われる人たちの話を聞いていると、「悪いけど、この人は自分であまり投資の経験はないのだろうな」と思う人がたくさんいる。そんな人の言うことよりも実戦をこなしてきて成功した人の話を聞く方がよっぽどいい。もちろんそういう人たちは失敗も多くしてきているだろうから、それも含めて聞くことは非常に役に立つ。

 特に最近は、ブログやSNSで個人が情報発信できる機会が昔とは比較にならないほど増えてきている。ブロガーの人の話の中にも非常に参考になるものがたくさん見受けられる。それらはおおいに活用すべきだろう。最近では出版業界でもそうした個人投資家が書いた本が取り上げられるようになってきている。もちろん全てが役に立つわけではなく、玉石混交であることも多いので、一概に全部を勧めるわけにはいかないが、これらの人たちの多くは投資で最も大切な“自分の頭で考える”ことを実践して成果を上げてきた人たちなので、十分傾聴に値すると思う。

 とはいえ、前述した三つのパターンの人たちが役に立たないわけではない。

 金融機関の人たちのお勧めはうのみにはできないが、少なくとも自社商品の内容については他の誰よりも知っているので、その情報に絞って聞くのであれば役に立つだろう。FPの人は、投資判断よりもっと以前の資金管理の考え方を学ぶ点では大いに役に立つ。アナリストや評論家は、できるだけ多くの人の意見を聞いてみることが大切だ。

 結局、一番大事なのはできるだけ多種多様な人たちから見方や情報をインプットし、それを自分で考えるという「体験」をすることだろう。投資で成功した人たちは多かれ少なかれ、頭を柔軟にし、自分で考える「体験」をする、ということを何よりも重視してきた人たちだということを忘れてはいけない。

(経済コラムニスト 大江英樹)