要は、いつ今の会社を辞めても他で活躍できるだけの技術や知見、そして新しい仕事を見つけることのできる人脈、そうしたものを持つことのトータルが人的資本なのだ。よく、金融機関のCMで、「これからはお金に働かせる時代です」というフレーズが使われるが、お金はいつでも機嫌良く働いてくれるとは限らない。お金に働かせる前に自分で働くことを考えるべきだろう。

 そういう観点から考えれば、経済的自立とは貯蓄や投資だけではなく、自らの「稼ぐ力」を強化することでも可能である。

 具体的に言えば以下のような事柄もFIにつながると考えていいだろう。

・会社において自分が担当している業務に関する専門性をより高めていく
・会社以外の人的なつながりを増やすようにする
・勤め先のルールで可能であれば、複業(副業ではなく)体制を考える

 資産形成を貯蓄や投資で行うことも重要だが、それはそれとして、一方では「稼ぐ力」である人的資本を強くすることも重要なことである。働くことは何も会社に利益をもたらすためだけということではなく、自分の稼ぐ力を高めていくことにもなるのだから。

 また、自らの稼ぐ力とは少し視点は異なるが、これからの時代を考えた場合、夫婦であれば、いずれもが厚生年金に加入して共働きをすることも重要なことだろう。先ほど“複業”というキーワードが出てきたが、収入源を多様化することもFIにとっては重要なことである。

 FIのための方法は決して一つではない。金融資産の形成と人的資本の強化という二つの面をバランス良く考えていくことが大切である。そうしたさまざまな方法によってまずはFIの確立を図り、その後、REは自分のライフプランに合わせて考えていく、というのがよいのではないだろうか。

(経済コラムニスト 大江英樹)