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上久保誠人のクリティカル・アナリティクス

二大政党も新党もこぞって政局に走る今
あえて「人物本位の候補者選び」を提言する

上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]
【第47回】 2012年11月7日
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世論を恐れる安倍自民党を尻目に
政局の主導権を握りつつある野田首相

 野田佳彦首相が「近いうちに」とした衆院解散に、「一票の格差是正」「特例公債法の成立」「社会保障改革国民会議メンバーの人選」の3つの条件を提示し、野党が求める解散時期の明示を拒否した。野田内閣の支持率が10%台まで落ち込んでおり、安倍晋三自民党総裁は勢いに乗って、野田首相に解散を確約させようとしたが、野田首相は「ゼロ回答」を繰り返し、動じる様子を見せなかった。

 次第に安倍総裁は、世論の批判が自民党に向かうことを恐れ始めた。審議拒否が長引き、今年度予算の財源を確保する特例公債法案の成立が遅れれば、国民生活に深刻な影響が及ぶからだ。また、共産党、社民党、維新の会などが国会審議に応じることを表明し、野党の足並みが乱れ始めた。結局、安倍総裁は、特例公債法案の審議に応じ、社会保障改革国民会議の衆院選前の設置を容認した。

 一方、参院自民党は安倍総裁に従わなかった。先の通常国会で野田首相に対する問責決議が可決されたことを理由に、首相の所信表明演説を認めず、法案審議にも応じなかったのだ。しかし、参院自民党も世論を気にして強硬姿勢を貫けなかった。結局、参院は27年ぶりの「首相への緊急質問」を行ったが、首相から解散時期の言質は得られなかった。むしろ、野田首相が参院登壇の既成事実化に成功したといえる。

 要するに、自民党には野田首相を解散総選挙に追い込めず、手詰まりの状況だ。野田首相は「3条件」に加えて、経済対策の実施も、解散の条件に加えて「4条件」とするなど、政局の主導権を握りつつある。

「一内閣一仕事」の
野田首相が動じない理由

 野田首相は、「政権の延命を図るつもりはない。条件が整えばきちんと自分の判断をしたい」と繰り返し発言してきた。細川護煕元首相の薫陶を受けてきた野田首相は、「一内閣一仕事」を信条としてきた。自らの「一仕事」を消費増税と定めた野田首相は、権力の座に執着せず、党の分裂に動じない姿勢で小沢一郎氏率いる増税反対派を恐れさせ、自民党・公明党との三党合意を実現させた(第40回を参照のこと)。

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上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]

1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。

 


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国際関係、国内政治で起きているさまざまな出来事を、通説に捉われず批判的思考を持ち、人間の合理的行動や、その背景の歴史、文化、構造、慣習などさまざまな枠組を使い分析する。

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