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糖尿病や腎臓病も治せる日がやってくる!?
iPS細胞が中高年男性に与える“希望の光”とは

軸丸靖子 [医療ライター]
2012年11月8日
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 森口尚史氏の大嘘に若干の泥を塗られた感はあったにせよ、京都大学iPS細胞研究所長の山中伸弥教授にノーベル医学生理学賞が共同授与されることは2012年きってのグッドニュースだ。

 受賞理由は「成熟した細胞を、多能性を持つ状態に初期化できることの発見」である――と聞いて、さてどのくらいの人がピンと来るだろうか。iPS細胞って、大体何をしてくれるものなのか。それがどうノーベル賞級にすごくて、私たちの人生に関わってくるのか。12月の授賞式の前に、身近に引き寄せてみよう。

いまさら聞けない今回のノーベル賞の意義
痛んだ臓器を新しく、が基本コンセプト

 まずはiPS細胞がノーベル賞の対象になるに至った経緯を振り返っておこう。

 ヒトの身体は、およそ200種類の細胞が60兆個集まってできている。1つの受精卵から次々に「分化」して、血液、皮膚、骨などそれぞれミッションを持った体細胞になっていくのだ。細胞は、一度分化したらもう二度と戻らない、と1962年までは考えられてきた。

 この常識を覆したのが、今回山中教授と一緒にノーベル賞を受賞する英ケンブリッジ大学のジョン・ガードン名誉教授である。ガードン博士はカエルの腸細胞の核を卵の核に置き換える実験をした。すると細胞分裂が始まってオタマジャクシが誕生した。腸の細胞から子どもができたのだ。一度分化した細胞を、初期化でもう一度万能化できると分かった瞬間だった。ただし、なぜ初期化が起こるかは分からなかった。

 それから35年後の1997年、同じ英国で、ほ乳類の細胞でも同じ初期化ができることが証明された。乳腺の体細胞の核を卵に移植することでヒツジが誕生したのである。乳腺=巨乳の女優にちなんでドリーと名付けられた「クローン羊」誕生のニュースは世界中を駆け巡った。

 翌年、米国でヒトES細胞が作製されたという報告が、さらなる衝撃をもたらした。ヒトの受精卵を、子宮に着床する前に取り出し、バラバラにして培養する。すると永遠に増殖を続けるだけでなく、刺激次第で神経細胞や心筋細胞など目的を持った細胞も作れる万能細胞になるというニュースだった。米ウィスコンシン大学ジェイムズ・トムソン教授によるこの報告は、「病気やケガで失われた臓器や神経を、新しく作って取り替えられる」という人類の夢を現実に引き寄せ、再生医療を一気に加速させた。

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軸丸靖子[医療ライター]

宮崎県出身。南日本新聞記者ののち、2004年米コロンビア大学公衆衛生大学院修了(MPH)。 日本医師会総合政策研究機構研究員、医学週刊誌「Medical Tribune」編集部、インターネットニュース編集を経て08年からフリー。著書に『ルポ産科医療崩壊』(ちくま新書)、共著に『告発は終わらない ミートホープ事件の真相』(長崎出版)、編集協力に『慢性疼痛 こじれた痛みの不思議』(ちくま新書)。多い取材領域は産婦人科、循環器科、心療内科、医療政策、医療裁判。歯科やマンションのムックも実績あり。


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