ゴム林に茶畑…深刻な乱開発

 生息地を離れる原因について、地方紙「雲南日報」は、「2015~17年にかけて保護区で進んだ深刻な乱開発」を挙げている。雲南省の名産といえばプーアル茶などの茶葉だが、土地を開墾して換金作物の栽培に乗り出す農家が増えているようだ。

 中国の経済誌「財経」は北京師範大学の研究を取り上げ、「1975~2014年にかけて、アジアゾウが分布する自然林の面積や農地が減少する一方で、ゴム林は23倍、茶畑は2.5倍に増加した。アジアゾウの生息に適した低木、竹、広葉樹の混合林に覆われた谷や海抜1000メートル未満の丘陵地帯などは、75年当時の3分の1にまで減少した」と生息地の異変を訴えている。

 また、「経済日報」は森林の状況について、「保護区内の森林は保護されているものの、樹木は高く密集し、樹冠密度が高い。そのため低木や植物が育ちにくくなっている」と報じている。

 その一方で、アジアゾウの数も増えた。雲南省林草局の調査によれば、1980年代には170頭以上だった個体が、2018年には293頭になった。しかし、保護区の森林にはアジアゾウが食べたがるサトウキビ、コウゾ、ガジュマル、竹などの植物がほとんどない。多くの中国メディアは、保護区から離れて餌を探すゾウの姿があちこちで目撃されるようになった理由を「食べ物がなくなったこと」と関連付けている。