中国と連携してうまく対処できる部分はないのか

 Sさんが一番、無力状態に陥ったとき、一部の中国人の友人から漢方薬などの支援を受けた。支援を呼びかけたということもあって、こうした好意をありがたく受けとった。医療関係者でもない自分は、気持ちを受け取るくらいでしか、なすすべがないだろうと思った。

 しかし、3日の夜、中国山西省にいる医療機械企業関係者とのネット会議で、予想外の情報を入手した。その企業関係者の話は次の通りだ。

(1)山西省は2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)の治療を通して得た教訓と経験を今回のコロナ禍の対応に生かすことができた。その典型例としては、隔離病院が今回の新型コロナ感染者の治療に非常に役に立ったということだ。

(2)SARS治療時に大量のホルモン剤を投入した影響か、患者の命を助けられたが、深刻な後遺症に苦しみ、車いすの生活を強いられた人もいるという。それを教訓として、新型コロナ感染者の治療には西洋薬だけではなく、漢方薬も積極的に投与した。

 1の問題はよく理解できる。日本政府は、なぜ稼働率がゼロ同然のホテルや大型施設などをすぐ隔離用の施設に一時的に改造して利用しないのか。おそらく予算の問題や医療関係者の確保の問題などが挙げられるだろうと思う。そのいずれも難しい問題だが、本気でその問題に取り組めば、絶対、解決策が見つかるはずだ。

 2の漢方薬の投与効果については、今でも私は半信半疑だ。漢方薬が果たして新型コロナウイルスの治療に効果があるかどうかについては、エビデンスが不十分という指摘もあるので注意してほしい。

 しかし、中国での報道(参照)によると、昨年、新型コロナによる死者数は、確かに山西省では少ないようだ。昨年3月13日、山西省内で最後の新型コロナ感染者が晋中市伝染病医院を退院した。これで同省の133人の新型コロナ感染者が全員、完治したという。この記録がいまでも保たれていることは、私には奇跡のように思えた。

 山西省は、石炭資源にあぐらをかいて、環境汚染、官僚腐敗、企業無法といった問題が山積している。これらのこともあって、私は山西省に対して関心が低かった。しかし、新型コロナが発生して以来、同省の新型コロナの実績を見て、私はがぜん興味がわき、早く同省を訪問したいと焦りを覚えた。

 日本はコロナ対策で思い切った措置や効果のある方法などを採用しないといけないだろう。私は、新型コロナ感染対策をめぐって、日中間は交流の頻度と分野をもっと増やすべきだと提案したい。その橋渡し役が必要なら、喜んでその役を買って出る。Sさんが舐めたようなあの入院待ちの苦しみ、孤独感、無力感を覚える感染者を一人でも減らしていきたい。

(作家・ジャーナリスト 莫 邦富)