近年、会社や事業を取り巻く経済環境の変化が激しくなったことで、素早い決断や行動がこれまで以上に求められる時代になった。しかし、必要な情報を収集して頭を整理しても、いざ決断・実行の段になると一歩を踏み出すのは難しい
そこで参考になるのが、誰でも「即断即決、即実行」ができるようになる効果的なコツをまとめた『ゼロ秒思考[行動編]』(赤羽雄二著、ダイヤモンド社刊)だ。本書は、累計34万部を超えるベストセラー『ゼロ秒思考』で紹介した「メモ書き」をベースに、ビジネスパーソンの「行動力」を高めることに力点を置いた1冊で、スピード感のある「決断力」「実行力」を身につけるためのノウハウを丁寧に解説している。
今回は 『ゼロ秒思考[行動編]』より一部を抜粋・編集して、「仕事ができる人」と認められるために必要な思考法を紹介する。(構成/根本隼)

「仕事ができる人」と周りから評価されるために必要な思考の整理法とは?Photo:Adobe Stock

初めは紙やホワイトボードに書く

 たとえば「年末年始の過ごし方」を考えるときに、「自宅でのんびり過ごす」「実家に帰る」「ホテルで正月を過ごす」という選択肢を挙げ、どれを選ぶべきかを検討するのが「オプション」という思考法だ。

 このオプションにおいては、大事な選択肢を漏らさず挙げる必要がある。これが第1のポイントだ。当初は(というか相当な期間は)、頭の中だけで選択肢を挙げるだけでなく、紙やホワイトボードに書いてみる。これだけで「漏れ」が生じる可能性は格段に低くなる。

 しかしこのとき、「大事な選択肢」が何かという判断をうまくできる人とできない人がいる。「大事」というのは、その施策にどれだけの意味があるかということだが、経験がないと適切な判断ができない。意味のない選択肢を挙げすぎてしまったり、とんちんかんなことをしてしまったりする。

オプションをきちんと評価する

 大事な選択肢を漏らさず挙げることができたら、次はそれを適切に評価する必要がある。これが第2のポイントだ。

 選択肢を挙げただけで終わってしまっては、頭は整理されるかもしれないが、実行の点では意味がない。選択肢を挙げるだけで瞬時に優劣がわかる場合もあるかもしれないが、そうしたことは珍しいし、評価の正確さに欠けている可能性が高い。

素早く良質なリストアップをするには?

 オプションにおける選択肢を素早くリストアップするにはどうしたよいか。これは取り得る施策の範囲をまず最大限考えてみることから始まる。

 年末年始をどう過ごすか考える場合、

・自宅でのんびり過ごす
・実家に帰る
・ホテルで過ごす

 というオプションが考えられた。

 この場合、当初から予算の関係でこの3つの選択肢が挙げられたようだ。しかし、ホテルに泊まる予算と同額で旅行にも行ける可能性がある。

 また、「国内旅行に行く」という選択肢は挙げられても、海外旅行は高いというイメージがあって、最初から除外してしまうかもしれない。しかし、実はソウルなどの海外旅行のほうが国内旅行より安いこともよくある。選択肢を思い込みで除外してしまうと、可能性を意味なく狭めてしまうことになる。

オプション内の親子関係・兄弟関係に注目

 選択肢をリストアップした後は、思い込みやケアレスミスで大事なものを見落としていないかを、全体観を持って改めて確認する必要がある。

 このときの見直しのコツは、オプション内での親子関係、兄弟関係に注目することだ。たとえば「年末年始の過ごし方」のオプションを親子関係から見直すと、「年末年始」ではなく、予算の関係から、もう1つ上のレベルで、「1年の家族の長期休暇の過ごし方」の一部として考えるべきかもしれない、という可能性も出てくる。

 一方、選択肢の1つの「国内旅行に行く」は、より具体的に箱根や京都のような都市名のレベルで分割すべきかもしれない。

 兄弟関係での見直しとは、年末年始の過ごし方として国内旅行という選択肢が挙がっていたとき、海外旅行はその「兄弟」として浮かべることができるはずだということだ。また、先ほどのように国内旅行の行先として箱根や京都を挙げたとしたら、同じレベルの選択肢として、札幌やその他の都市は挙げなくてよいのかを検討することだ。

 親子関係、兄弟関係への意識があれば、始めからかなり精度の高いオプションを作成できるし、少なくとも見直しの時点で大事な選択肢を見逃すことはない。

 何より、こうした縦と横への意識の展開が、つまり、どこまでを「全体」とし何を「部分」にするかという思索が、あなたの全体観を育てていく。そして、即断即決、即実行へとつながっていく。

「仕事ができる人」と周りから評価されるために必要な思考の整理法とは?

オプションの評価には、4~5個の基準を定める

 オプションを立案した後は、オプション内の選択肢をどう評価するかを、本当の目的に即して決める必要がある。これは、各選択肢の違いを評価するうえで最も妥当な4~5個の評価基準をオプションに書き加えることで行なう。

「年末年始の過ごし方」の例で言えば、家族団らんの趣旨から「楽しさ」「目新しさ」「親孝行度」「費用の小ささ」ということになるだろうか。

 どの評価基準を採用するかによって、どの選択肢が一番よいか、家族全員がきちんと納得できるかが大いに変わってくるので、ここは素早くかつ慎重に決める必要がある。

もめ事を起こさずに意思決定を行なうには?

 オプションが自分1人のことではなく、家族や組織など複数人に関わることであれば、特に大事な点が2つある。

 1つは、各選択肢の評価を実際に始める前に、参加者全員が納得できる評価基準をリストアップすること。2つめには「それらの基準で本当に評価し、決まったら文句を言わずに実行する」と明確に合意しておくことだ。その合意なしに進めたり、評価をするなかで評価基準を決めたり一部修正したりすると、間違いなくもめ事になる。

オプションの習慣化が「全体観」につながる

 オプションに慣れてくると、会議で議論が混乱しかけたときに、さっとホワイトボードに書いて整理することができるようになる。これがその場ですぐできる人はほとんどいないので、容易にリーダーシップを発揮することができる。

 それだけではない。仕事全般、情報収集への感度も上がり、成長が加速されていく。常に広い視点からオプションを考えることが習慣になるので、問題の把握でも、解決策の提案でも視野が広がっていく。そして、自己中心的な決めつけが減り、客観視ができるようになっていく。全体観を持てるので、即断即決、即実行が実現していく。