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ゼロ秒思考[行動編]
【第1回】 2016年1月18日
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赤羽雄二

即断即決、即実行を妨げる
心理的ブロックと解決法

「やるべきことはわかっているのに、なかなか動けない」「どうしてもグズグズしてしまう」という悩みを持つ人は多いだろう。そうした悩みを解決するために、10万人超の熱狂的ファンを生み出した『ゼロ秒思考』の著者がまとめたのが『ゼロ秒思考・行動編』だ。今回は同書より、「即断即決、即実行」を妨げる8つの心理ブロックとその解決法を紹介する。

 即断即決、即実行に大きなメリットがあることは、ほとんどの方が理解しているだろう。にもかかわらず、多くの人はなぜ即断即決、即実行ができないのか。

 それは、心理的なブロックがいくつもあるからだ。この章の冒頭で述べたように、即断即決、即実行できないのが、「どうしていいかわからない」ときであっても、「本当はわかっているのに直視したくない」ときであっても、妨げになっているのは、端的に言えば「不安と恐れ」だ。ここではそれを詳しく整理していこう。

情報を集めきらないと不安、怖い

 なぜほとんどの人は即断即決、即実行しようとしないのか。一番大きい理由として、「情報を集めきらないと不安、怖い」ということがある。本当はとっくに結論を出せるはずなのに、情報を集め続ける。もっとこの情報、あの情報がほしいと、集める作業をやめることができない。もちろん、その間は決断と行動を先延ばしにする。

 情報を集めれば集めるほど正しい結論を出せるのであれば意味はあるが、そういうケースはほとんどない。多くの場合、すでに十分な情報を集めているか、もうよい情報はなくなり、結論の精度は上がらない状況になっている。より正しい結論を出すためではなく、結論を出したくないばかりに、あるいは仕事をしていると思い込みたくて情報を集め続ける。

 問題は、本人だけではなく周囲もそれを許してしまい、情報を集め続ける状況が続いてしまうことだ。実際は、情報を集める時間だけではなく、情報を集める費用も無駄であり、チームに、組織に迷惑がかかる。アクションが遅くなることによる機会損失も大きい。情報収集が役立つどころか、害にすらなってしまう。

 こうした状況の解決には、よい方法がある。簡単すぎて申し訳ないが、それは、短期間に限って情報を集めることだ。ものによって期間は変える必要があるが、数時間、数日間、あるいは長くても1~2週間程度で十分と考えよう。情報の「量」ではなく、情報収集の「時間」で管理をするということだ。

 新たな情報で判断の基軸が大きく右にぶれたり左にぶれたりするときは、まだ検討不足、情報不足と考えてよい。しかし、期限内であっても、新たに得られる情報によってもう判断が揺るがないとき、特に判断のための新たな「軸」が増えないときは、もう今ある情報だけで判断すべき時期だ。

 実は、この状況になると当人の中ではほとんど結論が出ているはずだ。わかっているのに意思決定するのが不安なために、単に先延ばししたいために、まだ情報が不足していると言い続けていることが多いのではないか。その証拠に、私がタイミングをみて「もうこれで判断するしかないですよね」「こういう状況だから、もう判断してもいいのではないでしょうか?」と迫ると、同感してもらえることがほとんどだ。そうやって迫る人がいないとずるずる行ってしまう、そういうことはないだろうか。

 ビジネスの世界では1分1秒が貴重なのに、非常にもったいない。コスト削減には力を尽くしても、こういう時間削減の可能性に関しては、どこの会社もかなり甘いようだ。

 なお、注意点としては、情報収集の際には、インターネットや新聞、雑誌、本などの資料だけでなく、知見がありかつ率直に意見を伝えてくれる人にも必ず相談しておく。土地勘のない分野で独力で情報を集めると、大きく方向性を間違えることが多いからだ。

すぐ頭がいっぱいになる

 即断即決、即実行できない理由として、「すぐ頭がいっぱいになってしまう」という人も多い。どういうことかというと、頭が整理されておらず、あらゆることが気になっていて、あるいは一部の評価にとらわれ過ぎていて、それ以上考えることができなくなっている状況だ。必然、何をすべきかという選択肢のリストアップも、その評価も中途半端になる。

 決断し、行動しなければならない段階になっても、選んだ施策を実行したときの周囲の反応が気になってしかたないし、過去の失敗が走馬燈のように浮かび上がってくる。「あれもやらなければ」「これも何とかしなければ」と気にするあまり、1つ1つを片付けていくことができない。即断即決以前の問題として、まともに判断することができなくなってしまう。どんどん悪循環が拡がっていく。そうなると、余計に頭がいっぱいになり、即断即決、即実行など到底できない状況になる。

 どうしてこういうことが起きてしまうのだろうか。頭が悪いとかそういうことではなく、不安で自信がないので、状況を分けてとらえたり、順序だてて考えたりすることに関して苦手意識が強すぎるのだ。

 この解決には、まずは『ゼロ秒思考』で説明したA4一枚の「メモ書き」をお勧めしたい。頭がいっぱいになったと感じたら、すぐに「メモ書き」で整理をしてみる。『ゼロ秒思考』で解説したやり方で毎日続けていけば、どんどん頭はクリアになっていく。また、思考の対象がある程度、特定の仕事や目標に絞れてきたら、本書で詳しく解説する「オプション」と「フレームワーク」に挑戦していただきたい。これらも即座に効能を実感できるはずだ。 

A4用紙を横置きにして、左上にタイトル、右上に日付、本文を4~6項目で各20~30字書く。このフォーマットと、「1ページを1分で書き、朝起きてから夜寝るまでの間に毎日10ページ書く」というルールを守る。そうすると不安やもやもやがなくなり、確実に頭がよくなっていく。

予定を変えることが不安。何もかも決めておきたい

 予定を変えることを不安に感じる人も多い。一度立てた予定を変えることがともかく不安になる。どういう予定なのか、予定をどう変えるのか、本当はそれによって全然違うはずであるが、内容に関係なく、変えることそのものが不安を呼び起こす。神経質で気が小さい人はこうなりがちだ。

 ところが、現実の問題はどんどん変わるものだし、取るべき対策もダイナミックに変化する。決まった通り動けばよいとか、変化が起きないということはほぼない。だから、予定を変えることそのものが不安な場合はかなり困ることになる。状況変化に対応できないからだ。

 また、予定を変える以前に、事前に何もかも決めておかないと心配だという人も結構いる。ことに当たる前に何もかも決めようとすると、かなり時間を取られる。先のことは一定以上わからないのに、こういう人は何から何まで計画を立て、決めておこうとする。当然、膨大な量を調べ、ああでもないこうでもないと言いながら、詳細な計画を立てる。選択肢を出しすぎる人、ということもできるだろう。

 やってみなければわからないことも多いが、そうは思わないらしい。無駄かもしれないとか、動き始めてから考えたほうがよいかもしれないとか、そういう発想がない。こういう人は、いざ実行という段になると、環境の変化、複雑さに対して、言いようのない不安を感じてしまい、平常心を維持することが難しくなるようだ。

 『ゼロ秒思考』のメモ書きは、こういったタイプの方が自分の不安を自覚し、即断即決、即実行できるように自身を修正していくためにも、間違いなく有効だ。
 「なぜ、自分は予定を変えると不安になるのか?」
 「なぜ、自分は事前に何もかも決めておかないと心配なのか?」
などのタイトルで掘り下げてメモを書き続けてもらいたい。

人に依頼すること、頼ることが面倒、不安

 仕事を素早く円滑に進めるには、他の人にうまく依頼し、頼ることが重要だ。ところが、そうすることが怖い、という人が少なからずいる。個人としての能力は決して低くないが、いつも1人でしか仕事ができない。仲間ができたとしても長続きしない。自分のことだけなら即断即決、即実行ができていても、人に頼んだり頼らなければならないところで、とたんに仕事がストップしてしまう。こうなると、少しでも規模の大きい仕事はできなくなってしまう。

 こういう人に話を聞いてみると、他人に依頼したり頼ったりするのが面倒だし、任せても逆に仕事が増えてしまうなど、期待を裏切られることがある、というのが不安の要因のようだ。確かに、他の人に頼んで常にうまくいくとは限らないが、いつもそういう気持ちだと、誰も支えてくれなくなる。そのため、「どうせ、誰も助けにならない。誰も助けてくれない」と感じ、ますます殻に閉じこもることになる。

 こういった方も、ぜひ『ゼロ秒思考』のメモ書きで自分自身が人に頼れなくなった原因を掘り下げてみてほしい。その根幹を自覚できるようになるだけでも、即断即決、即実行に大きく近づけるはずだ

選択肢を出し切らないと不安、怖い

 選択肢を全部出し尽くさないと不安でしょうがないということもあるだろう。これは、先ほどの「情報を集めきらないと不安、怖い」とはまた違う理由だ。

 たとえば、イベントの開催時期の検討で、現実的には「来月初め」「来月中旬」「来月末」という3つの選択肢で十分であるにもかかわらず、今月末だったらどうなのか、再来月ならどうなのかなど、延々と他の選択肢を考え、議論し続けるということだ。

 これも慎重なようでいて、実際は単に引き延ばし、時間つぶしをしている状況だ。大差ない選択肢であれば、それをより精緻に検討するよりも、さっさと行動して結果を見たほうがよいのに、そういう態度を「無謀だ。慎重さに欠ける」として否定したりする。

 そういう人たちは、「選択肢を全部出し尽くさないと危ない。最善を尽くすことにならない」という大義名分のもと、比較的どうでもよい些少な点にこだわり、自己満足のための検討に陥りがちだ。そのために時間が浪費されて事業のチャンスが失われたり、競合企業が着々と橋頭堡を築いたりしても、なぜかそれはあまり気にしない。

 この解決策としては、次回で紹介する「オプション」の練習を重ねることが有効だ。適切な数と質の選択肢を、即座に挙げられるようになる。

「失敗したらどうしよう」と、やる前に悩む

 「やってだめだったらどうしよう」ということが気になって、即断即決、即実行ができない人もいる。確かにいつも成功するとは限らない。失敗することも当然ある。難題であればなおさらで、サボらず、最善と考えられる努力を重ねても、一度や二度は必ず失敗すると言ってもよい。むしろ、その失敗からの学びが、成功のきっかけになる。

 それに、仕事で果敢に挑戦してうまくいかなかったとしても、会社は意外に高く評価するものだ。ほとんどの経営者は、そういう挑戦をしてくれる社員があまりに少ないので、ぜひやってほしい、とすら思っている。

 それでも失敗が怖い、という人もいるかもしれないが、それ以上に、「何もやらなくて放置したらどうなるのか」ということも冷静に考えてみてはどうか。やはり「オプション」を使って、問題に対して「対処する」「対処しない」の2つの選択肢を比較してみてほしい。

 その結果、本当は放置しておいてよい問題だと気づくこともあるだろう。しかし、放置できないと思えたなら、やはり即断即決、即実行で対応すべきだ。少なくとも、やる前に悩んでしまい、そこで止まってしまうのは、本当にもったいないとしか言いようがない。

即断即決、即実行に拒否感、アレルギーがある

 ここまで挙げた、不安や恐れに類する理由と違って、即断即決、即実行という考え方や仕事のスタイルについて、そもそもあり得ないと感じる人たちもきっと多いだろう。

 あなた自身がそうでないとしても、特に旧態依然とした大企業では、新しいタイプの行動スタイルは周囲に不安を呼び起こす。即断即決、即実行以前に、単に従来よりも速く仕事をしようとするだけで摩擦が生じる。「他の人の迷惑になる」とか、「調整しなければ一部だけで先行することは許さない」とか、「今までのやり方と違うからだめだ」とか、あらゆる理由をつけて、新しいやり方をつぶそうとする。速く動くことによるリスクを延々と説明され、「失敗したら誰が責任を取るんだ」という殺し文句を盾にプレッシャーをかけられるだろう。実際は、できる限り速く仕事をしたほうが早く成果が出て、PDCAを何回も回すことができるので、リスクはずっと少ないのだが。

 万一、あなたに少しでもその傾向があるとしたら、『速さは全てを解決する』を読んでいただきたい。スピードへの意識と考え方が、少なからず変化するはずだ。

わかっていても動けない

 やるべきことがわかっていても、どうしても体が動かないことがある。情報も十分以上に収集しているし、選択肢もほぼ明確で、それ以外には恐らくないこともわかっている。どの道を選べばよくて、自分が何をすべきかもわかっている。むしろやるべきことはもうその仕事しかない、という状況のこともある。それでも気持ちが動かない。割り切ることができない、踏ん切りがつかないという状況だ。

 「頭でわかっていても体がついてこない」「即断即決はできても、即実行はできない」とも言える。決して、うつ病などの深刻な問題ではなくて、こうした心理的なブロックは誰にでもある。皆さんにも経験があるだろう。今までも「ぐずぐずしてしまう」とか「すぐ動けない」などの言葉で表現されてきた状態だ。誰にでも心当たりがあり、解決法が明確でないから、実はこれが一番やっかいだ。

 この場合も、『ゼロ秒思考』のメモ書きで個別の原因を探ることはもちろん有効だ。しかし、問題別、仕事別で恐らくさまざまな理由に突き当たり、普遍性のある解決策は浮かばないのではないか。そこで次回は、「わかっていても動けない」も解決する1つのヒントと、2つのツールを紹介することにしよう。

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赤羽雄二(あかば・ゆうじ) 

東京大学工学部を1978年に卒業後、小松製作所で建設現場用ダンプトラックの設計・開発に携わる。1983年よりスタンフォード大学大学院に留学し、機械工学修士、修士上級課程を修了。1986年、マッキンゼーに入社。経営戦略の立案と実行支援、新組織の設計と導入、マーケティング、新事業立ち上げなど多数のプロジェクトをリード。1990年にはマッキンゼーソウルオフィスをゼロから立ち上げ、120名強に成長させる原動力となるとともに、韓国企業、特にLGグループの世界的な躍進を支えた。2002年、「日本発の世界的ベンチャー」を1社でも多く生み出すことを使命としてブレークスルーパートナーズ株式会社を共同創業。最近は、大企業の経営改革、経営人材育成、新事業創出、オープンイノベーションにも積極的に取り組んでいる。著書に『ゼロ秒思考』『速さは全てを解決する』(ダイヤモンド社)、『マンガでわかる! マッキンゼー式ロジカルシンキング』(宝島社)などがある。

 


ゼロ秒思考[行動編]

累計21万部突破のシリーズ最新作であり、「即断即決、即実行」を実現するシンプルなトレーニング法を解説した『ゼロ秒思考[行動編]』。
そのポイントである「即断即決、即実行を妨げる心理ブロック」や、「全体観」という概念を一部紹介する。

「ゼロ秒思考[行動編]」

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