「新しい働き方の意識調査」から見る、シニア就労の現在と今後

2019年4月に施行された「働き方改革関連法」や、昨年(2020年)から続く新型コロナウイルス感染症の世界的拡大で、企業・団体の雇用状況と被雇用者一人ひとりの就労観に変化が出てきている。特に、高齢化が進む日本の労働市場において、「シニア*1 が、いつ、どこで、どのような仕事をいつまで行うか」は、国内の経済力に影響する大きなテーマだ。株式会社スタッフサービス・ホールディングスの「『定年制』についての意識調査」をもとに、同社広報部の野坂洋介さんにシニア就労の現在と今後を聞いた。(ダイヤモンド・セレクト「オリイジン」編集部)

*本稿は、現在発売中のインクルージョン&ダイバーシティ マガジン 「Oriijin(オリイジン)2020」からの転載記事「ダイバーシティが導く、誰もが働きやすく、誰もが活躍できる社会」に連動する、「オリイジン」オリジナル記事です。

*1 WHO(世界保険機構)では、シニアを65歳以上としているが、国内において厳密な定義はない。たとえば、「東京しごとセンター(東京都指定管理事業)」では、55歳以上をシニアにするなど、行政や企業・団体によっても対象年齢(世代)は異なっている。本稿では50代以上を「シニア」とする。

「定年制」について、6割の若年層が「必要」と回答

 株式会社スタッフサービス・ホールディングス*2 の「『定年制』についての意識調査*3 」は、「定年制の延長」が議論されていることに着目し、20~60代の男女1100人(全国在住)を対象に行われた。まず、今回の調査結果で、同社広報部の野坂さんが最も「意外」だった回答は何か。

*2 人材総合サービス事業を全国で展開。本社は東京都千代田区。代表取締役社長は阪本耕治
*3 「新しい働き方の選択肢に関する意識調査 第2弾」=【調査概要】 調査方法:インターネット調査 調査対象:全国の20歳~60歳の男女1100人 調査期間:2021年6月2日~6月7日

野坂 「一定の年齢で会社を退職する『定年制』は、必要だと思うか?不必要だと思うか?」という設問で、全体回答における必要派が56.2%、不必要派が43.8%と、賛否が分かれたことが意外でした。別の調査で、「副業」や「選択式週休3日制」といった新しい働き方について、若年層は好意的に賛成する傾向がありました。

 そうした新しい働き方が重視されていくなかで、「定年制」は「不必要派が多いはず」と予想していましたが、結果は半々。国の定年延長の方針や定年制廃止に舵を切る企業もある状況下で、これは予想外な結果でした。世代別に見ると、若年層は、約6割(20代=60.0%、30代=59.0%)が「定年制」を「必要」と答えています。

 その理由として、「定年はひとつの区切り」「組織の新陳代謝、世代交代」という声がありました。一方、不必要派には、「本人の働く意思の尊重」「人手不足だから」という声があり、それらは予測していたとおりでした*4

*4 「『定年制』についての意識調査」における、フリー回答欄のコメントから

 回答者の世代別人数を見ると、特定層への偏りはなく、20代から60代の就労者たちの考えが、今回の調査結果には満遍なく表れているようだ。数字や声(コメント)の中には、それぞれの人が、あらゆる意思で、さまざまな働き方をする“ダイバーシティ就労”の様子が垣間見えるが…。

野坂 今回の調査結果から改めて分かったことは、個人個人の働き方に対する考え方の広がりです。シニア就労、テレワーク、副業、ワーケーションなど、多様な働き方が広がる中で、雇用形態や就労期間にとらわれず、キャリア形成の考え方も変わりつつあるのではないか、と。自分の現在の仕事が好きな人は、自分が納得する限り、その仕事に携わっていたいでしょう。

 しかし一方で、キャリアアップしたい人は、新陳代謝が活発化した組織で、個人の能力が生かされる機会が多い組織を好むのではないか、と。どちらが正解というわけではなく、就労希望者のニーズに沿うかたちで、働き方は多様化していくと見ています。人材総合サービスを展開する当社は、そうした「多様な働き方の時代」においても、一人ひとりの働こうという想いと、より良い「働く」を繋げていきたいと考えています。