もちろん、トヨタが最も重視しているのは、「脱炭素・カーボンニュートラルの実現」である。そのため、化石燃料発電に依存している地域では従来のHEVを提供することが最適解といった具合に、世界各地域のエネルギー実情に応じた電動車供給を進めるとしており、必ずしも欧州勢のようなBEVの普及ありきではない。

 しかし、今回の発表で、車載電池への開発・生産投資を30年までに大幅に拡大し、高性能な電池の開発や電池と車両の一体開発などによって、HEVやPHEV(プラグイン・ハイブリッド車)のみならず、BEVやFCEVでも世界での優位性を確立する方針を明確にした。ちなみに、トヨタは電動車に対しすべてEVを付けるよう呼称を変えてきている(HVではなくHEVとするなど)。

 30年までの電池投資1兆5000億円は、いよいよとなったトヨタのBEV本格展開の嚆矢(こうし)になるということだ。

各国で燃費規制、新車規制の波
対応に苦慮するメーカー

 いま、脱炭素社会の実現に向けて、世界各国・地域が年々取り組みを強化しているが、自動車の脱炭素規制は、走行時に車から出る温暖化ガスの排出量を減らす“燃費規制”と、国や地域内でエンジン車の販売自体を禁止する“販売規制”の両面から加速してきている。違反すると、各メーカーには罰金が科される。

 これが、EVなどCO2ゼロ・エミッション車への転換を各社に促す大きな要因になっている。

 最も規制が厳しいのは欧州だ。欧州連合(EU)は自動車のCO2排出ゼロ、すなわち事実上の内燃機関車の禁止を35年までに求める規制案を示している。また、欧州はCAFE規制と呼ばれる燃費規制を本格施行し、走行1kmあたりのCO2排出量を平均95g以下に抑えられないメーカーには罰金が科される。