日本の就活システムのメリットもある

 もっとも「海外での就職活動はもっと大変」という意見もある。

 海外の外資企業への就職は、採用時期も不定期で、常に行きたい会社をウオッチしていなければならないからだ。英国の企業に就職した日本人のYさんは「日本の就職活動は、その時期が来ればどの会社も採用の門戸を一斉に開いてくれるという意味で、悪くはないシステムだと思います」と語る。

 Yさんは、日本での就活を一通り経験したが、在学中は日頃から、関心のある企業へピンポイントでアプローチしていた。ギネスブックの発行元であるギネスワールドレコーズに憧れていたYさんは、同社社員から話を聞くことができるところまで駒を進めるが、結局「今のところ採用枠はない」と告げられるなど、独自の「売り込み作戦」は空振りが続いた。

 しかし、この経験が「個性をアピールする人材を歓迎する」という欧州での職探しに結び付いたことは、思わぬ果報となった。

 振り返れば、昭和の時代は国際化の黎明(れいめい)期ゆえ、グローバル企業は数えるほどしかなかった。就活も“手書きの履歴書”を人事担当者に送って連絡を待つというアナログなものだったが、その時代なりの良さもあった。その一つが、企業側の人を見極める嗅覚と人間味だった。「多少成績が悪くてもこの学生はいける」と直感し、“型にはまらない逸材”を掘り出し面倒を見て、業績に結び付けた企業も少なくなかった。

 外国人留学生が投げかけるのは、今の就活スタイルは「採用側と求職側が互いに響き合うような出会いの場になっているのか」、という問いでもある。

 2019(令和元)年度に大学(学部・院)を卒業または修了した留学生は3万0504人、そのうち、日本国内で就職した者は1万0490人〈参照:2019(令和元)年度外国人留学生進路状況・学位授与状況調査結果〉で、就職率は約34.4%にとどまる。国が目標とする5割にはなかなか届かない。

「日本の産業にイノベーションをもたらす」と期待される外国人留学生だが、企業が求めるのは“日本化したグローバル新卒”とも言えそうだ。外国人目線がとらえた矛盾の解消こそが、日本経済の再興に一歩前進をもたらすのかもしれない。