ここでいう埋蔵金とは、盗賊が霞が関に隠した金塊のことではない。財務省が管理する特別会計(通称:特会)の中にある積立金のことだ。国の予算の一部である特会は、専門家でもよくわからない仕組みになっており、一般の人の目に触れることは殆どない。
「財務省は、その特会の仕組みを使って、資金の“隠し球”を持っているのではないか」というのが、“霞が関埋蔵金”のそもそもの言葉の由来である。そうした埋蔵金があるのであれば、「増税をする前に、“隠し球”を出すべきだ」との指摘が、自民党や民主党の一部の議員から出ている。
特別会計の積立金=“霞が関埋蔵金”
国の予算には、大きく分けて一般会計と特別会計とがある。特別会計には、林野業や治水事業など特定の事業を行なうために設けられる事業特別会計や、特定の資金を運用するために設定される資金特別会計などがある。その資金特別会計の中に、財政融資資金特別会計(財融特会)と外国資金特別会計(外為特会)とがあり、それらの中に、今回指摘されている積立金=埋蔵金と称される多額の資金が眠っているというのだ。
財融特会とは、債券=財投債を発行して調達した資金を、政府系の金融機関や地方公共団体を通して零細企業などに貸し付ける仕組みだ。貸出しによって得られる利息収入や運用益と、財投債発行などの費用との差額=利益の一部を、金利変動準備金として毎年積み立てることになっている。
金利変動準備金とは、将来の金利上昇などによって損失が発生することに備える目的の積立金だ。その額は、2007年度末には約17兆9千億円になると見込まれる。その他にも、外国為替相場の安定化を図るなどの目的で設定された外為特会にも、財融特会とほぼ同額の積立金が蓄積されていると見られる。これが、埋蔵金説を唱える人たちがいう“霞が関埋蔵金”の正体だ。