プライシングは、サブスクリプションビジネスにおける事業戦略のキモです。値付けや階段の幅、高さなどの設定によって、そのサービスの収益は大きく変わります。また、ユーザーがどれだけ価値を感じてくれるかを反映した単位にしなければ、なぜ契約を続けてもらえるのか、なぜ契約を止められたのかという部分の仮説検証が粗くなってしまうため、プライシングは非常に慎重に行っていく必要があります。

 値上げや規約変更でユーザーに不利な変更は、日本でも嫌われます。もちろん、安いままで機能が上がるのが望ましいとは思います。ただ一方で、明らかに機能が向上し、ユーザーが得られる価値が高くなっていて、その価値を本当に享受しているのであれば、価格が上がることは致し方ないことだとも考えます。

 事業者の側から見れば、特にスタートアップなどが最初から強気のプライシングをするのは、なかなか難しいことです。そこで始めはどうしても保守的な低めのプライシングをすることになりますが、そのままではいつまでも収益が上がりません。最初のMVP(Minimum Viable Product:顧客価値を提供できる最小限の製品)から徐々に機能が加わり、価値が高まったのであれば、しっかりと値上げをすべきだと思います。

 ですから、サブスクリプションサービスでは、定期的に価格の見直しを行うべきです。ただし、ユーザーから「囲い込んで逃げられないようにされている」ように見えないよう、きちんとコミュニケーションを取って、どのような価値が加わったのか、どのような価値体系でプロダクトを提供しているのかを説明していくことは大切です。

仮説検証のスピードを上げたいなら
短期解約を恐れてはいけない

 サービスの提供者、事業者側からすれば、月額よりは年額で契約できた方がうれしい、というのが本音でしょう。極端なことをいえば、年単位の契約しか交わせないというかたちにすれば、途中で解約があっても解約料を請求する、あるいは1年分の金額はもらってしまうということが可能になるので、収益は確保しやすくなるでしょう。