電気の解約手続きで唖然、省力化のツケを顧客に負わせる企業の深い課題身の回りにあるサービスの解約手続きで、フラストレーションを溜め込んだ経験はないだろうか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

マイクロソフトやグーグルでエンジニアとして活躍し、複数の企業で技術顧問を務める及川卓也氏は、家族の死に伴う手続きを行う過程で、さまざまな組織の課題に直面したという。行政機関のDXの課題について考察した前回記事に続き、今回は企業の「顧客体験」(カスタマーエクスペリエンス/CX)に関する課題について取り上げる。

電話のたらい回しでイチから
音声ガイダンスを聞き直す

「亡くなった人のサブスクリプションを解約するのが大変だ」という話は、SNSでもメディアでもしばしば目にします。私も母の死に伴って、さまざまなサービスの解約手続きを行いましたが、インフラサービスである電力の契約解除は特に大変でした。合計でどのくらい時間を費やしたか測ってはいませんが、大変良くない「顧客体験」(カスタマーエクスペリエンス/CX)だったことは確かです。

 私の場合は、母の家に残された検針票に記載されているカスタマーセンターに電話をかけました。ご存じかと思いますが、こうしたカスタマーセンターでは、すぐには担当者にはつながらず、いわゆるIVR(自動音声応答装置)がいったん応答します。そこで「○○にご用の方は1番、××にご用の方は2番……」と用件に応じて番号をプッシュするよう、音声によるガイダンスがあります。

 この時点でまず、最初のフラストレーションがありました。なぜならガイダンスを一通り聞いても解約手続きの選択肢が何番か分からず、もう一度聞き直しても、やはり分からなかったからです。

 結局「おそらくこれだろう」という番号を押していき、オペレーターが電話に出るのを待つところまでたどり着きました。「ただいま大変混雑しています」というアナウンスが流れ、コールセンターで混雑していないときなんてないじゃないかと思いながらも、そのまま待っていると、合間に「電話でなく、スマホでもお手続きができます」という案内が流れてきました。

 案内によれば、スマホを使ってウェブサイトでも手続きができるとのこと。ただ、解約などの手続きではウェブで手続きを進めても、最終的には「電話をかけろ」と言われそうな予感がします。そこで案内は無視して、電話がつながるのを待つことにしました。