JR西日本は2018年3月に発表した「JR西日本技術ビジョン」の中で、人口減少時代にも持続可能な鉄道・交通システムの構築を目指す方針を示していた。その後のコロナ禍を受けて2020年10月に改定した中期経営計画でも、「地域ニーズに適した持続可能な交通体系の模索」として鉄道システムの再構築を表明している。

 これだけを見れば、将来的に不採算ローカル線をBRTに転換していくとの決意表明とも受け止められそうな今回の実証実験。果たして狙いは何なのか。なぜ、自動運転と隊列走行に着目しているのか。JR西日本イノベーション本部次世代モビリティ開発担当・不破邦博担当課長に話を聞いた。

 コロナ禍で大幅な赤字に転落したJR西日本だが、2020年3月に開発プロジェクトの構想を発表していることが示すように、これはコロナ後に動き出した取り組みではない。「持続的な交通が今後の経営のキーになっていくということで、4~5年くらい前に私的な勉強会として始まり、海外の取り組みを見ていくなかでBRTは選択肢になると考えました」と不破担当課長は振り返る。

 ただ、日本でBRTという言葉を不用意に使うと面倒なことになる。不破担当課長は「BRTと言っても日本の場合は定義がさまざまで、ローカル線を置き換えればBRTか、一般道でもPTPS(公共車両優先システム)を導入すればBRTか、あるいは連接バスを導入すればBRTという話もあって、Bus Rapid Transitの『Rapid(高速)』はどこに行ってしまったのかという話になります」と苦笑する。

 BRTとはバスを活用したRapid Transit(都市高速輸送機関)である。鉄道は高速輸送、大量輸送で圧倒的な優位性があるが、建設と運営に莫大なコストを要する。そこで鉄道ほどの輸送力は必要ない地域で、鉄道より安価な交通システムとしてBRTが注目を集めているというわけだ。

 だが、輸送力は劣ったとしてもRapidが犠牲になっては意味がない。そこでバス専用レーンの設定や信号機の優先制御など様々な手段を組み合わせて、鉄道に劣らない速達性を確保する、というのが本来のBRTの姿だ。

 JR西日本の場合は、バス専用道の走行を前提に速達性と定時性を確保する。不破担当課長によれば表定速度(停車時分などを含んだ速度)は時速25~30キロを想定しているといい、これは地下鉄の時速30~35キロには及ばないまでも、モノレールや新交通システムに匹敵する数値であり、本格的な都市高速輸送機関であると言えよう。