11月、中国では新政権の発足とともに、新しい時代が幕開けした。だが、新しいリーダーたちに期待を抱く国民はどれほど存在するだろうか。少なくとも上海は、もともと政治への関心が低い土地柄というせいもあるだろうが、メディアの騒ぎとは裏腹に、上海市民の無関心さは際立っている。

 彼らの声を拾ってみると、そこにあるのは期待ではなく、むしろ諦めであることがわかる。

「まったく期待しない」「器が変わっただけ」との冷めた反応は少なくない。「新政権に期待を寄せる連中がいるとしたら、それは相当問題だ」というコメントすらあった。

新指導部はどう人民に尽くすか?
国民の切実な願いは収入格差の是正

 11月14日、中国共産党の第18回党大会が終わり、翌15日、習近平氏が党総書記に選出されたが、そんな上海市民も耳を傾けたのが、習近平氏が記者団に向けて行った演説だった。

「対人民負責、為人民服務」(人民に対して責任を負い、人民のために尽くす)――。

 毛沢東氏が残した有名な政治スローガンに「為人民服務」という言葉がある。残念ながら今の中国では、人民は党員幹部らの汚職の犠牲となっており主客転倒な状況だが、習近平氏は本来の「人民のため」への回帰を強調すべく、「対人民負責、為人民服務」という言葉を使ったのだ。政治に無関心な上海市民も、その一言には一定の評価を与えたようだ。

 では、人民のためにどう尽くすべきなのか。

「新政権が解決すべき課題とは?」という筆者の問いに、上海市虹口区に住む会社員の女性は、切実にこう訴えた。