新薬が流通するまでのプロセスとは

 筆者宅の8歳の猫も1歳の時に急性腎不全を患い、この時は生死の境をさまよった揚げ句、「血まみれになりながら点滴を食い破る」といった武勇伝を入院先の動物病院に残しつつ生還してくれた。しかし、それ以降慢性腎不全となり、毎日自宅で皮下点滴をする生活を4~5年送っていた。そしてなぜか、奇跡的にだが快癒し、現在は皮下点滴とは無縁の生活を送っている。

 しかし、うちの場合は本当に奇跡に類するケースであり、「猫の腎臓病がなんとかできれば」という思いは一愛猫家としては変わらない。むしろあの奇跡が全ての猫、および全愛猫家に降り注げばいいと考えるばかりであり、今回取り上げた研究はその夢をかなえてくれる可能性のある、希望の光である。

 なお、動物用の新薬が市場で販売されるまでのプロセスから見ると、来春に予定されている「臨床試験」はかなり大詰めの段階にあたる。そのあとに待っているのは「承認申請・審査」、そして「承認・上市(市場に流通すること。つまり発売)」である。その後、市販してからの結果を受けて「再審査・再評価」があるようだ。

 とはいえ、「臨床試験」も数カ月から数年を要する上、この新薬開発を行っている宮崎徹教授が7月16日にサイトで発表したメッセージを読んだところ、治験薬の精製もかなり大変そうで、現実的には「すぐにでも上市」とはいかないかもしれない。

 しかし、それでもこの新薬の開発が成功すれば、未来の猫天使たちは紀元前のはるか昔から長らく背負ってきた“腎不全”という宿命から解放されるだろう。

 宮崎徹教授率いる新薬開発チームに、過度な期待を寄せてプレッシャーをかけるのは本意とするところではないが、「うまくいってくれたらいいなあ」と願わずにはいられない。今後の進展を静かに見守りたいところである。