商品開発で
重視する2つのこと

「コロナ禍では『売れないものをどう売ろう』と考えず、売れるものを売った方がいい」と宮本社長は言う。

「世の中が急激に変化しているわけですから、売れないものに固執すると苦労するのは当たり前ですよね。我々も主力商品だったキングファイルが以前のように売れるとは考えていません。ダメそうなら諦める、売れそうなら売ってみる。キングジムはその意思決定のハードルが非常に低いです。思いついたらすぐに出すことが一番大事です。問題が生じたら改善すればいい。ダメなら何らかの反応が返ってくるわけですから」

「ダメなことを経験しなければ、良いものは作れない」と話す宮本社長。キングジムには失敗を責めない企業文化が根付いており、10個の新商品の内、9個が失敗でも1個がヒットすればいいという考えだ。

 また、開発に当たって重視していることの一つはスピード、もう一つは「枯れた技術」の活用だ。

「キングジムの商品は、ほとんどが枯れた技術の組み合わせです(笑)。でも、それでさまざまな商品が作れます。それがおもしろい。新しい技術に挑戦しようと思ったら、大型投資をしないといけないでしょ?設備やら何やらお金が必要ですから、売れないと大変です。

 でも、すでにある技術の組み合わせなら、ダメならやめればいい。失敗を恐れなくていいから簡単なんですよ。私はマーケティング調査で商品が売れるかどうかを緻密に予想する、とか大嫌いです。データドリブン?そういうのはやらないですね。うちは直感勝負です」