小沼大地氏と伊賀泰代氏の対談最終回では、再度リーダーシップについて語ってもらった。日本でリーダーを増やすには、育成の仕組みを構築するとともに、リーダーの評価基準が必要という意見で話しは盛り上がった。

NPOと株式会社の垣根はなくなりつつある

伊賀泰代(以下、伊賀):ビジネスと社会貢献、企業にとってひとつの経済活動の中で双方のバランスを取るのは難しいことだと思うんです。いい商品ができれば、営利企業としては市場を独占して高く売りたいだろうし、一方の社会貢献なら商品は安価に売り、他社にもどんどん類似品をだしてもらえるくらいの方がいいとか、そういう対立が常に起こりえます。小沼さんは、そもそもこの2つは対立関係にあると考えていますか?

リーダーを育てるには、評価基準が必要小沼大地
(こぬま だいち)
特定非営利活動法人クロスフィールズ代表理事。一橋大学社会学部・同大学院社会学研究科修了。青年海外協力隊(中東シリア・環境教育)に参加後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。2011年3月、NPO法人クロスフィールズ設立のため独立。会社員時代より社会貢献活動に関心を持つ社会人向けのコミュニティCompass Pointを主宰。2011年10月には世界経済会議(ダボス会議)のGlobal Shapers Community(GSC)に選出される。

小沼大地(以下、小沼):組織体としての概念的な部分では、株式会社とNPOでは違いがありますが、社会貢献とビジネスというのは必ずしも対立関係にあるとは限らないと思います。

 いまではNPOでも株式会社でも、ビジネスとして顧客に価値を提供するという点で垣根はありません。また、我々NPOも継続的に事業を行うために、利益を出す必要があります。そして、生み出した利益を次の事業に向けて投資することで、さらに大きな社会的インパクトを出すことを目指すのです。株式会社との違いは、余剰の利益を株主に配分するか、社会的使命のために次の事業に投資するかという点だと考えています。

 実は先日、小暮真久さんの著書『社会をよくしてお金も稼げるしくみのつくりかた』を読みました。その中で、先進国・途上国間の食料の不均衡問題に取り組む、自身の運営するTABLE FOR TWOという活動のことを「社会貢献というビジネスをしている」と表現されておられました。食料不均衡の解消という思いをカタチにすることは、事業を持続的に経営するという点ではビジネスそのものなんです。