日本でもタックスヘイブン対策税制を強化
申告漏れ海外資産には税務調査のメス

 新聞報道によると、富裕層や企業の租税回避で、世界の国々は年間4270億ドル(約47兆円)の税収を失っているという調査結果もあるそうだ。つまり、公共投資や福祉に回すべき財源が、毎年これだけ不足していることを示す。

 日本政府も、この状況を見過ごすわけにはいかない。我が国には、1978(昭和53)年、租税特別措置法に盛り込まれた「タックスヘイブン対策税制(CFC税制/外国子会社合算税制)」がある。2017(平成29)年度税制改正で強化され、2018(平成30)年度、2019(令和元)年度にも改正が行われた。

 タックスヘイブン対策税制は、一言で言えばタックスヘイブンを利用して租税回避する行為を抑制・排除しようという制度だ。例えば、タックスヘイブンに設立したペーパーカンパニーに所得を集め、租税回避あるいは課税を大幅軽減しようとしても、子会社の所得を親会社の所得と合算し課税するルールが適用される。

 対象となるペーパーカンパニーは、税負担率30%未満の国・地域に設立された子会社となっている。税負担率30%以上でも、自社で支配・運営・事業管理を行わないペーパーカンパニー、資金提供以外に重要機能を負わない外国関係会社、ブラックリスト国所在法人も対象となる。

 国税局も海外資産に関する調査力を強化している。OECDが策定した国際基準「CRS(Common Reporting Standard/共通報告基準)」に基づく、非居住者に係る金融口座情報を税務当局間で自動的に交換するシステムには、日本を含む100以上の国・地域が参加。

 これにより、各国の税務当局は、自国に所在する金融機関等から非居住者が保有する金融口座情報の報告を受け、租税条約等の情報交換規定に基づき、その非居住者の居住地国の税務当局に対しその情報を提供する。2015(平成27)年度税制改正で、2017(平成29)年からは新たに口座開設等を行う場合、金融機関に居住地国名等を記載の届出書提出が必要となっている。

 CRS情報は2018(平成30)年9月に初回交換が行われたが、一定の成果を上げている。

 前項で悪質な脱税には国税査察という話をしたが、「海外資産ならバレないだろう」は通用しない。「ついうっかり」の申告漏れには、税務調査がやって来る。

 前回のコラム『日本の相続税は本当に高いのか?世界相続税ランキング』でも述べたように、2019(令和元)年事務年度の相続税務調査では「申告内容に問題あり」と指摘され、追徴課税を課された件数は過去最高に上った。超富裕層でなくとも要注意だ。