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自転車シェアリング・サービスが、欧米の主要都市で拡大中――今注目の都市内交通インフラを実現するテクノロジー

待兼音二郎
2012年12月7日
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ドイツで2000年に始まった「Call-a-Bike」は、携帯電話に解錠キーを通知し、街角で乗り捨てできることで、無人ステーションを必要としないユニークなサービスだ

 今世紀になってから、欧米各地の都市で自転車シェアリング・サービスが次々に導入されているのをご存知だろうか? 分けても規模や話題性で他を圧倒するのが、2007年にパリでスタートした「ヴェリブ」(Velib)だ。2008年にはパリ市全域で、約300メートルごとに1451ヵ所のステーションが設置され、2万0600台の自転車(市民100人に1台の割合)が利用可能となっている。無人ステーションのタッチパネルで利用者登録をし、登録料をクレジットカードで支払うだけという簡便さで、1回30分以内の乗車なら無料で何度でも借りられるため、市民のみならず観光客にも広く利用されている。

 アメリカでも29のシェアプログラムが稼働するまでになっており、2008年に他の自治体に先駆けて始まったワシントンD.C.の「Capital Bikeshare」は、ステーション175ヵ所、自転車1670台と全米最大の規模を誇る。また、ロンドンでも2010年にステーション400ヵ所、自転車6000台の規模で「Barclays Cycle Hire」がスタートした。どちらもヴェリブと同等のサービス内容で、パリと同じく24時間いつでも利用可能だ。

 要するに、レンタサイクルを都市自治体が市街全域で提供しているようなものだが、観光地によくある貸し自転車と違うのは、どのステーションにでも返却できることと、深夜早朝にも利用できること、そしてクレジットカードを個人認証に用いることで、めんどうな保証金を不要としていることだ。この三拍子が整うことで、公有自転車が都市内交通手段として実用レベルに達したわけだ。

 公有の自転車を皆で分け合って利用しようというサイクルシェアリングの試みは、1960年のアムステルダムなど古くからあるが、いずれも破損や盗難の多発に遭って頓挫してきた。利用者の素性を把握すること、盗む気を起こさせないこと、利用者の過失による損失額を確実に請求すること――その3点を多大な労力を要せずにクリアするには、クレジット決済とオンライン情報管理の発達する今世紀まで待たねばならなかったのだ。

 コストの面では、ステーションが無人化できたことが何より大きい。ステーションには立地条件の差があり、放っておけば特定の場所ばかりに自転車が集まってしまうため、トラックに積むなどして再配置する必要がある。オンライン・システムで各ステーションの台数を常時把握し、過去データを元に、イベントなどに合わせた需要予測も行うことで、無人でありながらきめ細かいサービスを提供できている。

 日本でも札幌(ポロクル)や横浜(ベイバイク)での実証実験を通じてNTTドコモが事業化に向けてとりくんでいる。自転車自体にGPSと通信モジュールを搭載することで遠隔ロック解錠を可能にし、無人ステーションを不要にする構想もあるという。

 ただし、シェアサイクルにとって強敵となる存在がある。地下鉄一日乗車券だ。パリ、ワシントンD.C.、ロンドンとも、シェアサイクルのほうが割安な料金設定になっているが、東京メトロ一日乗車券は710円で、大阪では800円(土・日・祝日は600円)、名古屋では740円(同600円)だ。これより安値でサービスを提供できるどうかが、日本での成功と失敗とを分けることになるかもしれない。

(待兼音二郎/5時から作家塾(R)
 

 

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