すなわち、(1)減税期間が従来の10年から13年へと延長されたり、(2)減税の対象となる住宅の最小面積が50平方メートルから40平方メートルに緩和されたり(間取り図に示された壁芯面積ではなく内法面積で算定されることに留意されたい)、(3)住宅購入目的での(専ら親から子への)贈与税の非課税枠が最大3000万円から1500万円へと縮小されつつも維持されていること(これは与党税調では来年度も維持する方針が決まっているとされる)である。

 これらが、住宅購入可能な所得層に対する優遇措置であり“不公平感”を助長するものと指摘されてきた。

 特に、住宅ローンの金利がゼロ金利政策もしくはマイナス金利政策によって歴史的低水準にある今、住宅ローン減税措置が必要であるかどうかについて議論するべきだとの意見もあり、住宅ローン減税という「制度」はどうやら曲がり角に差し掛かってきている印象を受ける。

住宅ローン金利は歴史的低水準
生命保険の機能があるローン商品も

 この歴史的低金利状態(2021年12月現在で0.310%という住宅ローンがある。また、ローン商品の中には疾病特約でローン元本が半額もしくは免除になるものもあり、そうした商品には生命保険のコストを一部カバーする効果もある)を考慮すれば、住宅ローンの控除率が元本4000万円(長期優良住宅は5000万円)を上限として1%控除するのは事実上の逆ザヤ、つまり年間の金利負担分より控除分の金額が上回ることになる。

 2021年度の税制改正大綱について、会計検査院からこのような指摘があり、これを受けて「年末時点のローン残高の1%かその年の金利相当額のうち、少ないほうを控除の対象とする」旨が明記された。

 したがって、2022年度の税制改正大綱で、住宅ローン減税の控除率が論点になることはあらかじめ決まっていたことなのだが、与党税調では控除率を1%から0.7%に引き下げ、代わりに13年の期間延長特例を恒常化することにした。ただし、この13年の延長は新築のみで中古は10年とすることになったため、よりお得感のある新築住宅が注目されることになりそうだ。

 2022年4月以降、控除率が0.7%に引き下げられても条件次第で“逆ザヤ”になる利用者は多数いるだろうから、会計検査院が指摘する状況が解消されるとはいえないが、“逆ザヤの縮小”にはなり得ることだけは間違いない。

 しかも13年に期間延長されることが正式決定すれば、毎年の控除額は一般住宅で最大28万円と縮小するものの、13年間の総額は364万円となり、現状の(特例なしの)控除総額(10年間で400万円)と、それほど大きな差はない。それでも、この決定によって“駆け込み需要”が発生する可能性は十分考えられる。