住宅ローン減税は
税収確保の“呼び水”

 そもそも、税制改正大綱とはまさに政策的・政治的な意図とプロセスをもって決定されるものである。

 では住宅ローン減税に関する政策的意図とは何か。

 それは一義的には住宅購入という“人生で一番大きい買い物”の購入時での心理的ハードルを引き下げることだ。

 住宅購入という経済活動は、実に裾野が広く、転居の際の引っ越し費用や家具・家電、調度品の購入、さらには地域経済にも日用品・食料品の継続的購入、飲食店、医療機関、学習塾ほかの利活用に至るまで幅広い経済効果が発生するし、電気・ガス・水道・インターネット回線などのインフラも加わって地域経済の発展に結果的に貢献することになる。1000戸単位の巨大なマンションが年間コンスタントに分譲される現状を考えれば、その経済効果は極めて大きいものとなることは明らかだ。

 住宅購入に向けてのハードルを国がローン控除という方法で低くすることにより、消費税や住民税などで広く薄く“回収”することが可能だから、ある程度の住宅ローン控除は住宅購入支援策の背景にある税収の確保という意味でも継続してしかるべき手段といえるだろう。

 税収の確保は消費税や住民税などに限った話ではない。住宅購入時には不動産取得税、登録免許税、印紙税などが(新築住宅および買取仲介では消費税も)発生するし、以降は住宅を所有し続ける限り、固定資産税および都市計画税(市街化区域内外の倍率地域などには適用されない)を納めてもらうことができる。住宅を相続する場合にも相続時精算課税制度が提供されるから、住宅にかかる税金は多岐にわたって国家の財政、税収面において貢献している。