吉村猛氏Photo by Toshiaki Usami

山口フィナンシャルグループ(FG)の前会長兼グループCEO(最高経営責任者)である吉村猛氏が、同社取締役を辞任する意向を固めたことが分かった。吉村氏は23日午後に辞表を提出するとみられる。(ダイヤモンド編集部 重石岳史、名古屋和希)

臨時株主総会前日に事態急変
吉村氏が取締役辞任を決断した理由は

 山口フィナンシャルグループ(FG)は24日午前10時、山口県下関市の山口銀行本店で臨時株主総会を開催し、吉村氏の解任議案を諮る予定だった。

 だが、その前日に吉村氏が自ら辞表を提出することで事態は急転し、議案が取り下げられる見通しとなった。臨時株主総会では、別の社内取締役1人を選任する第2号議案のみが決議されることになる。

 吉村氏の解任を巡る騒動の発端は、今年6月25日の定時株主総会にさかのぼる。

 吉村氏は株主総会において99%の賛成率で取締役に承認されたが、直後の臨時取締役会で吉村氏以外の取締役9人が吉村氏の代表取締役会長選任に反対。吉村氏はヒラの取締役に降格し、椋梨敬介氏が代表取締役社長グループCEOに就いた。

 山口FGはその後の記者会見で、取締役会決議について「あらかじめ準備されていたわけではない。(取締役)一人一人が高い見識の下、健全な、適切な判断をした」(取締役監査等委員〈常勤〉の福田進氏)と説明。椋梨氏も、ダイヤモンド編集部が11月2日に行ったインタビューで「事前に準備していたものではない」と述べていた(詳細は『山口FG椋梨社長に直撃!前会長の取締役解任の理由は「独断専行」』参照)。

 だがダイヤモンド編集部は、株主総会の約3週間前となる6月3日、福田氏から複数の社外取締役へ発信されたメールを入手。そこには、吉村氏を「経営トップ(代表取締役、CEO)として選定することはできない」として、代表取締役会長再任の「修正動議が必要」と記されていた。

 また同月16日のメールには、「吉村猛に代表権を与えず、会長は空席とする」という修正動議の具体的な中身について言及。株主総会前日の24日には、社外取締役が動議を提案するタイミングなど臨時取締役会の進行シナリオも用意されていた(詳細は『極秘メール入手!山口FGが虚偽説明の疑い、株主無視で前CEO解任「クーデター」の全貌【スクープ完全版】』)。

 つまり吉村氏を代表取締役やCEOから外す“クーデター計画”が事前にあったにもかかわらず、それを隠蔽して株主総会に諮り、さらに記者会見で虚偽説明を行った疑いがある。

 吉村氏自身も記者会見でそれを告発し、山口FGの「ガバナンス不全」を大々的に批判してきた。それにもかかわらず、臨時株主総会直前になぜ自ら辞表を提出する意思を固めたのか。

「敵前逃亡」の批判は当然のごとく予想されるが、吉村氏の周辺から漏れ伝わる話を総合すると、批判覚悟で辞任を決断した理由は大きく二つある模様だ。