0.05ミリメートルへのこだわりを捨てなかった。そんな頑固さのために3回クビになった。
ファッションに敏感な30歳代を中心に多くのファンを獲得し、日本を代表する眼鏡フレームのメーカーとなったのがフォーナインズ。ブランド表記は999.9。純金の品質表示に使われる数字をそのまま社名にも使っているその意味は、最高の品質を求めるとの宣言である。
フォーナインズ代表取締役 三瓶哲男 |
三瓶哲男は、眼鏡の専門学校を卒業後、眼鏡小売店で販売の現場を経て、1983年からデザイナーになるべくフレーム製作の技術を学び始める。“0.05ミリメートルのこだわりでクビ”は、デザイナーとしての修業を始め、自らのブランドを立ち上げる1995年までのあいだの話だ。
眼鏡のツルに弾力を持たせるには細くしなくてはならない。しかし、細くすると折れる危険性が高まる。そのギリギリを追求するための0.05ミリメートルだったのだが、眼鏡製造ではデザイナーよりも現場の職人のほうが権限を持っている。「どうでもいいじゃないか」という職人とケンカすれば、クビになるのは三瓶のほうだった。そんなことを3回、繰り返したのである。
ダメだったら肉体労働
追い詰められてブランドを立ち上げる
小売店時代、理想とする眼鏡フレームがないことに気づいた。デザイナーとなってからは、前述のようにクビの連続。1991年にフリーになってさまざまなファッションブランドにデザインを提案するようになってからも、採用されることは少なかった。徹夜の連続でデザインを作っても、収入ゼロという日々が続く。追い込まれて、自分の作りたいものを作るにはブランドを立ち上げるしかないと考えるようになる。「ダメだったら、道路工事現場で肉体労働すればいい」。1995年、33歳の決断だった(法人化は翌年)。