紙おむつや粉ミルクだけじゃない
越境ECの意外な売れ筋商品

 今後さらに躍進が期待される越境EC市場。どのような人々が日本の越境ECサイトを利用しているのだろうか。

「7~10年くらい前から、中国のユーザーがインターネットで日本製品を買うようになり、年々購入金額が増えています。当時から安定して人気が高いのは、日本製の『紙おむつ』『粉ミルク』『化粧品』。中国の工場で作られているものもありますが、子どもが口にするものや肌に直接つけるものは、日本の厳しい品質管理基準をクリアした日本製品を使いたい、というニーズが高いです。ほかの国でも、衛生面や安全面、トレーサビリティーを含めて“日本製品ならば安心”という見方は根強いですね」

 また、越境ECの利用者はインバウンドとも深く関わっている。越境ECユーザーのなかには、観光で日本に訪れたときに気に入った商品を“ECサイトでリピート買い”する傾向があるという。

「特に最近は、コロナ禍による渡航制限もあって日本で大量購入しにくい状況です。そのため、インバウンドで人気だった家電も、継続してECで購入されています。日本の伝統工芸品も人気ですが、なかには奇抜な置物など『どうしてこれが海外で人気なんだろう?』と不思議に感じるヒット商品もあるんです。日本とは異なる視点で、意外なものが売れるのも越境ECの特徴ですね。その逆もまたしかりで、日本で売れているからといって、海外でも売れるとは限りません。日本で人気のジュエリーを台湾で売り出したものの、激しく苦戦を強いられているケースもあります」

 正代氏は「日本と同じ“アジア圏だから”という認識のままでは、越境ECは成功しない」と、指摘する。そのため、越境ECではどの国で何を売るか、というマーケティングは必須だという。

「当社には『中国向けにECを始めたい』という相談が多く寄せられます。確かに中国は人口が多い分、マーケットとしては大きいですが、すでに日本製品を卸して売っている現地企業もあれば、長年中国を対象にEC事業を展開している日本企業もあり、競合が多い。中国の越境EC市場を今から狙うよりも、ほかの国を対象にするほうが参入のハードルは低いですね」

 確実に利益を出すには、現地の状況や流行、文化を把握して臨む必要があるのだ。

「実務面では、現地での物流やユーザーとの間にある“言語の壁”も大きな課題になります。もしも個人や自社での対応が難しい場合は、当社のように現地に法人を持ち、言語や他国の物流サポートを行うプラットフォームを利用する手段もありますね」

 そのほか関税への理解や、国ごとに法律で定められた越境ECで販売可能な商品の把握など、越境EC独自のルールへの対応が求められる。そのため、国内ECよりも綿密に計画を立てるのが吉だという。