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働く男女の「取扱説明書」

職場が大混乱!
「スピリチュアルにすがる女」「胡散臭がる男」

――なぜ女性は「スピリチュアル」にハマるのか?

西川敦子 [フリーライター]
【第13回】 2008年10月17日
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 「この仕事は私の天職ではありません。辞めたいんです」

 思いつめた表情の女性部下から突然そう言われて、中田堅司課長はたじろいだ。

 「だって、まだ中途入社してから1年経っていないよ。少なくとも4、5年は頑張らないと、仕事は身につかないんじゃないか? だいたい天職に就ける人間なんて、そういるもんじゃない。みんな与えられた場で頑張っているうちに、少しずつプロになっていくんだ」

 「天職は誰にでもあります。魂を喜ばせるためにする仕事が『天職』なんですよ。生きる糧を得るための仕事は『適職』にすぎません。私はこれまで4回、転職しましたが、結局天職に出会うことはできなかった。きっとどこかにあるはずなんです」

 思わず沈黙してしまった中田課長。彼女の言うことはまるで理解できない。魂が喜んでいないから転職するだって? 最近は若い男性も簡単に会社を辞めてしまうが、こんな理由は聞いたことがない――。

「胡散臭い」?「魂が向上する」?
流行のスピリチュアルの実態とは

 近年、30代前後の女性たちが、「前世」「霊」「オーラ」といった言葉をよく口にするようになった。彼女たちが信じているのはスピリチュアリズム、通称「スピリチュアル」だ。霊の存在や、霊と人間の交流を信じるという意味で、テレビ朝日の「オーラの泉」からブームに火がついた。

 ブームの中心となっているのが江原啓之氏。彼に傾倒する女性は非常に多く、「エハラー」などとも呼ばれている。最近では、癒しカウンセリングやお守りの販売など、さまざまなビジネスにも発展。全国60ヵ所ある会場では、11万人が参加するという大見本市「すぴこん(スピリチュアル・コンベンション)」まで開催されているという。

 「霊との交流」というとまるで新興宗教のようだが、スピリチュアルには教会はない。多くのエハラーたちは組織に属することなく、本やテレビなどを通じ、静かにその教えを学んでいるようだ。仕事面でのプラス効果もあるらしく、筆者の周りのエハラーはいつも同僚に優しく接し、つらい仕事にも音を上げない。

 ところが中には、「波動の合わない人といると具合が悪くなる」「ここは自分にとって学びの場ではない」と仕事を辞めてしまう人もいるという。江原氏の説くスピリチュアルでは、苦難は魂を磨くための大切なプロセス。けっして無責任な退職を勧めているわけではないらしいが、自分に都合のいい解釈をする傾倒者も少なくない。

 そんなこともあり、スピリチュアルブームを「胡散臭い」「不可解きわまりない」と見る人もいる。とくに男性の間では抵抗感が強いようだ。

 「結婚前うちの奥さんがはまっていましたね。私にも関連本を勧めてきました。『くだらないからやめろ!』とはっきり言い渡しましたよ。霊との交信なんて、まともな大人が信じることじゃないでしょう。以来、彼女は一切スピリチュアルのことを口にしなくなりました。部屋にあった本も見かけなくなったので、今は熱が冷めたんじゃないですかね」(IT関連会社勤務 30代男性)

 「僕の周りにも2人ほどいるんです。『今の自分を愛せばいい』という彼女たちの言葉には、抵抗を感じちゃいますね。自信が持てないから、自分にそう言い聞かせて安心したいのでは?なんだか、いつも自分を受け入れてくれる相手や環境を探しているようにも見える。仕事を頑張って、自信を獲得しようとは思わないのかな」(出版関連会社勤務 20代男性)

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西川敦子 [フリーライター]

1967年生まれ。上智大学外国語学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、独立。週刊ダイヤモンド、人事関連雑誌、女性誌などで、メンタルヘルスや介護、医療、格差問題、独立・起業などをテーマに取材、執筆を続ける。西川氏の連載「『うつ』のち、晴れ」「働く男女の『取扱説明書』」「『婚迷時代』の男たち」は、ダイヤモンド・オンラインで人気連載に。


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