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伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論

消費税アップの先送りはあり得ない!
財政再建の後退が高める国債暴落リスク

伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]
【第25回】 2012年12月25日
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「破綻」と言われても
おかしくない日本の財政状況

 皆さんの友人や親戚で、年収400万円なのに毎年500万円をどこかから借金してきて900万円使うような生活をする人がいたら、「あなたは破綻ですよ」と警告すると思う。収入の倍の生活費をいつまでも維持できるはずがない。

 現在の日本の財政はこれに近い状況である。政府の税収は40兆円を少し上回る程度なのに、歳出である予算規模は90兆円を超えている。埋蔵金を活用するなどいろいろな工夫をしてやりくりしているが、それでも40兆円近い新規の国債発行、つまり借金の積み増しをしているのだ。

 GDP(日本は約500兆円)の8%以上の財政赤字を出し続ける社会は異常である。それでも景気が悪いので、家計や企業の貯蓄資金が国債を購入してくれる。それで何とか持っている状況である。こうした財政状況をいつまでも続けられないことは明らかだ。

 連載の前々回でも述べたように、仮に景気が少し上向きになって企業貯蓄が投資に回るようだと、国債金利が上昇してしまう。1000兆円を超える公的債務を抱える政府にとって、金利上昇は財政運営に非常に大きな打撃を与えるだろう。

 それでも、今後この財政状況が改善する見込みがあるのであればまだよい。残念ながら、高齢化が進むほど社会保障費は増大する一方なので、歳入が増えないかぎり赤字は膨らむばかりである。消費税を10%に引き上げる法案が通ったので、この増税が実現すれば一時的な助けにはなる。ただ、この程度の増税では一時しのぎにしかならない。今後増え続けることが確実な社会保障費を賄うには到底十分とはいえない。

 大幅な財政赤字が出てしまう理由の一つは景気低迷である。景気が悪いため税収が落ち込み、それが財政赤字幅を広げている。もう少し景気がよくなれば税収が増える。財政運営はずいぶん楽になるはずだ。

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伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]

いとう もとしげ/1951年静岡県生まれ。東京大学大学院経済学研究科教授。安倍政権の経済財政諮問会議議員。経済学博士。専門は国際経済学、ミクロ経済学。ビジネスの現場を歩き、生きた経済を理論的観点も踏まえて分析する「ウォーキング・エコノミスト」として知られる。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」コメンテーターなどメディアでも活躍中。著書に最新刊『日本経済を創造的に破壊せよ!』(ダイヤモンド社)等多数がある。


伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論

「大いなる安定」の時代が去り、世界経済は激動期に突入した。新たな時代を迎えるための破壊と創造が求められるなか、日本経済が進むべき道とは?少子高齢化、グローバル化、IT化の進展といった長期トレンドを踏まえつつ、伊藤教授が現状のさまざまな問題を分析。20年後の日本経済を活性化する正しい戦略を提示する!

「伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論」

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