政権交代によって
政策は変わるのか
自民・公明が政権を奪回し、安倍内閣が成立した。衆議院選挙のときから、安倍総理は経済政策について積極的な発言をしてきた。特に金融政策については日本銀行に対して、かなり踏み込んだ注文をつけてきた。首相就任の直前には、日本銀行とインフレ・ターゲットを設定する合意まで取りつけた。
政権が変われば、政策をめぐる流れが変わるのは当然のことなのかもしれない。ただ、今回の政権交代後の政策の変化は、特に注意して見なくてはいけないだろう。
日本経済を再生するためには、三つの政策の組み合わせが必要となる。一つは、安倍政権が高らかに掲げている景気刺激のためのマクロ経済政策である。インフレ・ターゲットの設定によるさらなる金融緩和効果を狙うとか、当面の景気減速に対応するため規模の大きな補正予算を組むという政策などがこれに当たる。
二つ目は、供給サイドから経済成長を促す政策である。イノベーションを促進するような税制の導入、規制緩和によって産業の活力を生み出すこと、そして経済連携協定締結などの貿易自由化でグローバル化の恩恵を最大限に享受することなどが、供給サイド政策である。中身はまだ具体的になっていないが、安倍政権はこの分野でも積極的に政策を打ち出す姿勢を見せている。
三つ目は、財政健全化の道筋をつけるということだ。財政健全化そのものは、増税であれ、歳出抑制であれ、景気にはマイナス効果を持つものである。その意味では、拙速な動きは経済復活の足を引っ張ってしまうかもしれない。しかし、中長期の財政健全化に配慮せず、闇雲に財政出動や金融緩和による景気刺激策に走ると、国債金利上昇による混乱を招きかねない。
連載の第23回でも触れたように、政府債務が膨れ上がっているにもかかわらず、金利が低い状況ですんでいるのは、経済が低迷して民間貯蓄が積み上がっているからだ。財政が低金利で回っているのはデフレのおかげという困った面がある。政府の成長戦略が功を奏して民間資金が投資に回り始めれば、財政赤字のファイナンスに資金が回りにくくなる。その影響で金利が上昇を始めれば、財政問題から経済に悪影響が及ぶことも懸念される。