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不況前の常識では勝ち残れない! 業界別「経営戦略実践講座」

損失を考えずに利益だけを思い描く――。
中核戦略を誤らせる「心理作用」の罠

デロイトトーマツコンサルティング
【第10回】 2009年11月5日
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最小の利得を最大視する中小企業
「戦略のパラドックス」は強者の論理?

 「私の会社は中小企業なので、余裕がありません。1つのシナリオに全力をかけるしかないのです。同時に、1つに賭ける気概が成功をもたらすのです」

 これは、複数のシナリオに対応できるように予備の施策を準備することに対する、ある中小企業の反応である。潤沢に経営資源を持つ大企業に比べれば、少ない社員や資金を最大に活用することで成功を狙わざるを得ない企業にとっては、切実な話である。

 だが、「戦略のパラドックスに立ち向かう」ことの本質は、企業の大小とは関係ない。今回は、人間の心理面に対する考察も加え、組織的に戦略のパラドックスに対応するための方法を論じたい。

 基本的な戦略の立て方には、いくつかの類型がある。

 勝負事の最もシンプルな形は、チェスやオセロのような2人で勝敗を競うゲームだ。各々が相手の対応を予想し、次の一手を決定する。

 勝利を獲得するための理論として、フォン・ノイマン(ゲーム理論、コンピュータ開発、原爆開発に多大な功績を残した天才数学者)は、1928年に「ミニ・マックス定理」という普遍的な定理を編み出している。

 この定理によると、意思決定には「マックス・ミン戦略」と「ミニ・マックス戦略」という、2つの基本戦略がある。

 「マックス・ミン戦略」とは、想定される最小の利得を最大化する戦略、
「ミニ・マックス戦略」とは、マックス・ミン戦略とは反対に想定される最大の損失を最小化するための戦略だ。

 ゲームのような完全情報(プレーヤーが持つ情報がまったく同一)下では、両者の戦略は同じ結論(「ゲームの値」と言う)に導かれることを、ノイマンが証明したわけである。

 ただし現実の市場競争は、チェスとは情報環境もプレーヤー数も異なる。そのため、戦略の類型として、利得に注目するタイプと、損失に注目するタイプに分かれると考えておけばよい。

 トップマネジメントのタイプも、大きくは利得の最大化を指向するタイプと損失(リスク)の最小化に、より関心を払うタイプに分かれると言える。

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