規約改正時に立ちはだかる
特別決議の高いハードル

 ただし、管理規約は簡単に改正できるものではない。「マンションの憲法」を変えることになるわけで、本来であれば、管理規約のために専門委員会を立ち上げ、勉強会を開くなどして、時間をかけて改正の検討を行うべき重要な事柄なのだ。

 また、管理規約を改正するためには、どんなにささいな内容の変更でも、総会で特別決議の決議要件が必要になる。この特別決議も規約改正の高いハードルとなる。

 総会での決議事項は、議案の重要性に応じて普通決議と特別決議に分かれる。総会出席者(委任状や議決権行使書を含む)の過半数(2分の1を超える)の賛成で可決される普通決議と違い、特別決議は区分所有者および議決権総数の4分の3以上の賛成が必要となる。

 普通決議の場合は、総会出席者の人数と議決権が基準(分母となる数)となるが、特別決議の場合は全区分所有者の人数と議決権が基準となる。つまり、欠席はもとより、委任状も議決権行使書も提出しない区分所有者が4分の1いると、特別決議は可決できなくなるのだ。それほど、規約改正は重要な議決事項なのである。

 なお、使用細則については、普通決議によって内容の新設や変更を行うことができるため、管理規約の改正よりはハードルが低くなっている。

 そして、規約改正を何度も行うと、手元にある管理規約集は古くなるので、その更新も重要な作業だ。だが、これまでに多くのマンションで、適切に更新されず、表紙が色あせた管理規約集を見てきた。そんな古びた管理規約集を最新版にするには、規約改正が行われた過去の総会の議案書と議事録を頼りに、古い管理規約の内容を更新する必要がある。ところが、これがなかなか大変な作業で、正確に更新していくのには相当な苦労と労力が伴う。

 管理規約を適切に更新することが大切なのはいうまでもないが、さらに、できれば管理規約は製本された規約集の形ではなく、PDFなどのデータに電子化して、パソコンやタブレット、スマートフォンなどで読めるようにしておくといいだろう。そして、改正を行うたびにデータを更新し、常に最新の状態に保つようにするのが理想的だ。

管理状況が資産価値の判断基準に?
4月開始「マンション管理計画認定制度」

 このように、快適で円滑なマンション生活を送るために非常に重要な管理規約だが、実はマンションの資産価値にも少なからず影響を与える存在である。

 過去の記事でも言及したことがあるが、よく「マンションは管理を買え」といわれる。新築のマンションが美しくて設備も最新なのは当然だが、その後、年月を経ても、適切な修繕工事が施されて、住環境も良好な状態が続いているマンションになるか、経年によって建物や住環境が荒れるがままになっているマンションになるか、その運命は管理が握っているといっても過言ではない。

 そして、その管理の詳細を規定しているのが、「マンションの憲法」である管理規約だ。つまり、マンションの将来は管理規約の内容に左右されるわけである。

 実際、マンションの管理状況は、その資産価値への影響が大きいことから、マンションの不動産鑑定評価においても、管理規約は必須の資料とされている。また、マンションの売買の際には、宅地建物取引業法に基づき、宅地建物取引主任者は管理規約に記載されている内容の重要事項説明を行う必要がある。

 さらに、この4月から始まった「マンション管理計画認定制度」によって、マンションの管理状況がその資産価値にも影響を及ぼすことになりそうだ。