上海では追跡システムが発達している

 一方で興味深いのは、上海市民の間で「配給品の品質が怪しいと思ったら、すぐにアプリで追跡する」という習慣が浸透していることだ。

中国・上海市民が「異臭ハム」配給に憤り!食品偽装が横行する深刻な理由食品の番号を打ち込んだり二次元コードを読み取ることで、商品や企業情報を追跡できる(著者提供)

 例えばこんな事例もある。普陀区の住民の元に配給品の鶏の加工肉が届いた。開けてみると変な臭いがするので、生産日を確かめると袋には2022年4月13日と印字されている。住民はそれを疑い、生産日をスマホアプリでスキャンして確かめたところ、実際の生産日は2021年8月31日であることがわかった、というのだ。

 上海では通信アプリのウィーチャットの公式アカウントを使い、製品をスキャンして食品の履歴を確かめることができるトレーサビリティー(上海食品安全信息追溯)がすでに構築されている。2018年時点で4万社を超える企業の食品について追跡が可能だという。

 中国では食品の安全性が問われて久しいが、相変わらず、地方にはいい加減な食品企業も多い。それでも近年は、テクノロジーの発達で住民が「追跡」という手段で自己防衛できるようになった。食品偽装業者を追い詰めるこの変化は大きい。中国のトレーサビリティーについては稿を改めお伝えしたい。