この連載で指摘してきたように、米英、EUの動きに同調するだけでは、「サハリン1」「サハリン2」などの石油・ガス開発の利権を中国に奪われるだけとなる(第300回)。実際、シェルが「サハリン2」の利権を中国の大手石油会社に売却交渉中だという報道が既に流れている。

 かといって、日本が欧米と異なる戦略を取り、サハリンから撤退せずに粘ったとしても、中国がパートナーとなると、苦しい立場に追い込まれることは間違いない。結局のところ、どちらの道を選んでもデメリットは付きまとうのである。

サハリン権益が諦めきれない日本、ロシア制裁で「脱・八方美人」の覚悟を本連載の著者、上久保誠人氏の単著本が発売されています。『逆説の地政学:「常識」と「非常識」が逆転した国際政治を英国が真ん中の世界地図で読み解く』(晃洋書房)

 今の日本に求められるのは、ロシア極東の石油・ガス開発について、根拠のない楽観論に固執しないことだ。それには、「サハリン権益を諦めざるを得ない」という冷徹な覚悟も必要だ。

 その上で、日本が取るべき選択肢とは何か。それは、米英のスーパーメジャーズによる世界中の石油・天然ガス開発への投資や、米国内のシェールオイル・ガス開発への投資を増やすこと。もしくは、英連邦のオーストラリア、カナダ、南アフリカ、ナイジェリアといった資源大国との関係を強化することなどである。

 日本は日米同盟に加えて、英国などアングロサクソン諸国との安全保障や経済の関係を強めている(第301回)。その流れの延長線上で、より多くの資源大国と手を組む形で、エネルギー安全保障政策も進めていくべきではないか。

 米英・EUと中ロの間で、双方にいい顔をした挙げ句、中途半端になって何も得られず立ち往生することは避けたい。世界の分断をあえて進めることになっても、エネルギー安全保障について米英・EU側に完全に与する、中ロとは完全に関係を切るという強い覚悟を、日本は持つべきなのかもしれない。