ウクライナの想像を超える奮戦で、ウクライナ紛争が長期化・泥沼化している。そのウクライナの背後には、「味方した方が戦争に勝つ」という「不敗神話」を持つ英国の存在がある。日本の安全保障問題も議論に上がる中で、今一度、英国との協力関係を見直したい。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)
「戦争は英国が付いた方が勝つ」、ウクライナでも当てはまるか
ウクライナは、ロシアのミサイル攻撃に屈せず、その後の地上戦で頑強な抵抗を見せてきた。威力を発揮している武器は、対戦車ミサイル「ジャベリン」、トルコ製のドローン「バイラクタルTB2」、歩兵が肩に担いで撃てる地対空ミサイル「スティンガー」といったものだ。NATOから提供されたこれらの兵器は、開戦前からウクライナが保有していて、ロシア軍を待ち構えていたと、一部メディアでは報じられている。
実は、米英側は、ロシア軍の動きを掌握していた。昨年11月には、バイデン米大統領やジョンソン英首相が、ロシアのウクライナ大規模侵攻の懸念を訴えていた。実際、その頃、ロシア軍約9万人がウクライナとの国境沿いに集結していた。
だが、ウクライナのレズニコフ国防相が「侵攻が迫っている兆候はない」と発言するなど、まだ誰も本当にロシア軍がウクライナに侵攻するとは考えていなかった。
そんな中、昨年12月、ワシントン・ポストが、情報機関の文書の内容として、「ロシアがウクライナ侵攻を計画中」と報じ、ウクライナ国境に終結したロシア軍の規模や侵攻ルートを指摘した。驚くべきは、実際に侵攻が始まったときの規模・侵攻ルートを正確に的中させたことだ。
(Washington Post“Russia planning massive military offensive against Ukraine involving 175,000 troops, U.S. intelligence warns”)。
今年2月24日、戦闘が始まると、ウクライナ軍が、ロシア軍の経路、車列の規模、先端の位置などを把握して市街地で待ち伏せし、対戦車ミサイルやドローンでロシア軍を攻撃した。ロシア軍は、多数の死者を出した。
これが可能だったのも、米英の情報機関の支援があるからだ。米英側は、ロシア政府・軍の意思決定をリアルタイムに近い形で把握している。
過去の日本の歴史を振り返ると、戦争は英国が付いた方が勝つという「不敗神話」がある。なぜ英国が鍵なのか、そして日本にとって英国との関係がいかに大事だったのか解説しよう。