私がメモの重要性に
気づいたきっかけとは

「メモが面倒だから(またはメモがとれない状況だから)とらない」という人も多いでしょう。たしかに、習慣になるまではメモをとる行為は手間です。

 しかし、その結果メモリーミスの実害を被っているなら、なにか行動パターンを変える必要があります。ここまで説明してきたように、いくら自分の記憶力のなさを嘆いても意味がないことですから。

 私はメモの重要性を新入社員時代、先輩を反面教師として学びました。

 当時、私はある経済系出版社で何千社もの企業情報をまとめたデータ本の進行管理を行なっていました。年に4回出版されるその本は、締め切りが近くなると文字通り戦場のような騒ぎになります。

 その過程で「ここはこうしたほうが楽になりそうだ」「この作業はこうやればもっと早くできるぞ」といった改善点について、責任者であった先輩ともよく話したのですが、それらをメモしなかったために嵐のように忙しい期間が終わると忘れてしまうのです。

 もし毎週起きることであれば次回改善しようという気にもなるのですが、年に4回という間隔だったこともあり、結局、毎回同じ非効率さを味わっていたのです。

 そんな1年を過ごして自分が責任者になってからは、嵐のような校了期間中でも何か次回に向けて気づいたことがあれば、なぐり書きレベルでメモを残すようにしました。机に「改善メモ」を入れる封筒を貼りつけ、どんどんそこに放り込むようにしたのです。

 その結果、少しずつですが作業の改善を行なうことができるようになりました。それが評価されて大きなプロジェクトにも加われるようになっていったのです。