おそらく皆さんも仕事でDropboxやEvernote、GoogleカレンダーやOutlookなど、各種アプリを使っていると思います。これらは世間では「仕事効率化ツール」と呼ばれていますが、言い方を変えれば「記憶補助ツール」にほかなりません。そして、実際それらのツールは、人の情報処理の中核を担うワーキングメモリの負荷を下げ、情報処理をすばやくすることを通して、仕事を効率的に処理することに役立つのです。

 そのなかでも、メモこそもっとも原始的で、もっともわかりやすい記憶補助ツールであり、仕事効率化ツールでしょう。

メモをとらないのは
ワーキングメモリのムダ遣い

 メモをとる習慣がない人からすれば、メモを書く手間を省いて仕事を少しでも効率化している気になっているかもしれません。しかし、メモに書かずに頭で「覚えておかなきゃ」と思うこと自体がワーキングメモリのムダ遣いであり、仕事の非効率化の要因になっているのです。

 ワーキングメモリは短期的に記憶を保存する倉庫であるだけではなく、情報を処理する作業台でもあるので、覚えておかないといけない量が増えるほど作業台が狭くなり(=注意力を消費し)、複雑な情報の処理ができません。

 その点、メモに書き残せば、即座にワーキングメモリを解放できますので、仕事の精度やスピードも上がるのです。

 上司が新人に対して「メモしなさい」と口うるさく言うのは、いままでの新人たちの姿や、上司の若い頃の実体験からどうせ忘れることが目に見えているからです。とくに新人のころは新たに覚えないといけないことが膨大にあります。記憶力が悪そうだから言っているのではありません。

 それに、新人のころからメモを習慣づけておくことで、数年後、より高度な業務を同時並行で進めなくてはならないときにも、ワーキングメモリをオーバーフローさせることなく業務が遂行しやすくなることを上司も(ワーキングメモリのメカニズムはわかっていなくても)経験上、わかっているのです。