中国当局が設ける海外との壁

 もっとも金に糸目をつけなければ、海外旅行を試みることはできる。

 上海に拠点を置く旅行会社の担当者は「便数は減ってはいますが、高額な航空券を購入できるなら個人での海外旅行はできる、という建前となっています」と話す。

 一部では減便は緩和に向かうという報道もあり、隔離政策についても「14日間の集中隔離+7日間の自宅健康観察」を「7日間の集中隔離+3日間の自宅健康観察」に短縮した。今後は正常化が期待できそうな気配も漂う。

 だが、今あるのは「中国から出るな」という出国制限だ。

 国家移民管理局は5月12日、「中国国民の不要不急の出国を厳しく制限し、出国や入国のために必要な書類や理由を厳格に審査する」と発表した。外国からのウイルスの侵入と、国内の感染のリバウンドを防ぐためというのが主な理由だが、「必要な場合を除いて」との前置きはあるにせよ、「中国から出るな」という強いメッセージである。

 “建前”としては、パスポートがあり、航空券の予約があれば出国できるわけだが、今のところ空港の出入国管理官による“出国目的の尋問”を免れることは難しいだろう。また中国政府は昨年8月、パスポートの発行についても緊急の場合を除いて大幅に制限し、「当面は発行を行わない」(国家移民管理局)と発表、国民の自由な移動に制限をかけている。