ピザ代金の支払いから投機対象へ
存在感を高めてきた仮想通貨

 2021年11月末、ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨の相場が下落に転じた。最大のポイントは、仮想通貨の価値が基本的に不安定なことだ。経済学の基本的な理論では、通貨には(1)価値の保存、(2)価値の尺度、(3)交換の手段――の三つの機能がある。

 特に、価値を保存するために、通貨の価値は安定していることが必要になる。例えば仮に、昨日は1000円だったお札の価値(紙幣の名目価値)が、今日、500円に下落したら、私たちが安心してモノやサービスを取引したり、投資したりすることはできない。そのため、中央銀行は通貨価値の安定を責務に、金融政策を運営している。

 しかし、ビットコインには価値を一定に維持する仕組みがない。ビットコインを手に入れたい人は「分散型元帳技術」と呼ばれる「ブロックチェーン」上で一種の数学の問題を解く。一番早く正解した人は他の参加者全員によって解法の正当性を承認してもらい、ビットコインを手に入れる。その発行データは過去から脈々と延伸するチェーン(取引記録データ=ブロック、を数珠のようにつないだもの)に書き加えられる。

 もし、改竄(かいざん)などによってコインを手に入れようとする人は、全ブロックを書き換えなければならない。理論上、改竄が正規の手続きを上回ることはできない。重要なのは、ビットコインの価格の変化ではない。ブロックチェーンが自律的にデータを更新し、ルールに従ってコインの発行と管理を実施することだ。

 発行されたビットコインは、当初はピザ代金の支払いなどに用いられた。13年に発生したキプロス・ショック(キプロスの財政危機)では、海外に資金を持ち出すための手段に使われた。中国でも、海外に資産を持ち出すためなどにビットコイン需要が増えた。

 そうして世界中で人気が高まった。ビル・ゲイツ氏が指摘するように、他者がより高く買ってくれる「根拠なき楽観」が膨張したのだ。その後、コロナショック対応としてFRBなどが金融を大幅に緩和した。投機熱に拍車がかかり、上がるから買う、買うから上がるという強気相場が鮮明化した。