日産と三菱自は日本国内で共同開発した軽自動車の新型EVを三菱自の水島製作所で生産し両社のブランドで発売、好調なスタートを切っている。三菱自は、軽自動車の量販EVで先行した実績があり、日産はリーフ以来EV事業に力を入れてきた経緯がある。ともにEV技術力で優位性を誇る。

 加藤隆雄三菱自社長は「ルノーが分社化するEV会社が当社にとって価値を持つものなのかどうか、しっかり確認して結論を出したい」とし、内田誠日産社長も「協議は進めているが、アライアンスが強くなれるかということで論議を重ねてアプローチしたい」と慎重な言い回しに終始する。

 それもそのはずだ。日産は復配したがこの年度末5円配当としたばかりで、三菱自動車も業績回復したが無配継続と、ともに再建は道半ばにある。ルノーのEV分社化に出資する余力はないのが実態で、むしろルノーがEV事業に資本を含む参画を求めるならば、今後の議論は資本関係の見直しも含めたものになるだろうとの声も浮上している。

 ルノーと日産のアライアンスに三菱自動車が加わった日仏3社連合では、19年3月に3社間で締結された覚書(MOU)に基づいて「アライアンス・オペレーティング・ボード」が設立されてガバナンス機能を果たしているが、今後3社のバランスをどう取っていくのかが焦点だ。特に日産にとって長年の悲願であった資本関係再構築へステップを踏めるのか、正念場となる。

(佃モビリティ総研代表・NEXT MOBILITY主筆 佃 義夫)