こうした認識のもと、フランスの子どもたち(3~17歳)の7~8割が、バカンス(自宅以外で4泊以上連続で過ごす)に出かけます(出所:国民教育・青少年省他)。また、自宅近くでさまざまなアクティビティーができる施設で過ごします(以下、夏休みの過ごし方の典型例)。

子どもたちの夏休み2カ月の過ごし方(典型例、都市部一般中流家庭の3~15歳)

2週間:祖父母や親戚・家族の家で過ごすか、彼らと旅行
2週間:自宅近くの余暇教育センター(Centre de loisirs educatif )で、文化、芸術、スポーツ、自然体験などの活動
1週間:ホリデーキャンプ(Colonies de vacances)で、文化、芸術、語学、スポーツ、キャンプ、田舎生活体験などの活動
2週間:親とバカンス
1週間:新学年スタート前準備

ジレンマを抱える
日本の親たち

 日本でも、我が子が夏休みを楽しく伸び伸びと過ごし、新しい体験を通じ成長してほしいと願う親御さんは多いはずです。

 例えば、菓子メーカーのクラシエフーズが、昨年5月に3歳から9歳までの子どもがいる母親を対象に実施した意識調査では、そのことが如実に表れています。

「夏休みを迎えるにあたって、子育てにおいて楽しみなことは?」との問いに対し、上位3項目は、1位:家族で思い出を作ること(48.5%)、2位:子どもに新たな体験をさせてあげられること(37.5%)、3位:非日常の体験を一緒にすること(36.3%)となっています。

 また「夏休みに子どもに体験させたいことは?」との問いに対し、上位5項目は、1位:自然に触れさせたい(56.0%)、ストレスを発散させたい(48.3%)、旅行に連れていきたい(32.5%)、新しいことに挑戦させたい(28.5%)、個性を伸ばしたい(24.0%)となっています。

 他方、日本の子どもたちは大忙しで、ゆとりがありません。宿題、自由研究、補習に加え、部活や塾で大忙しです。日本の中高生の85%が部活に励みますが、夏休み中も、体育系の4割がほぼ毎日(3割が週3~5日)、文化系の2割がほぼ毎日(2割が週3~5日)と、お盆休みを除く大半の時間を部活に割いています(出所:ベネッセ2016年)。また全国平均の通塾率は、公立小学校の子どもの4割近く、公立中学校の子どもの7割近くと学校以外でも勉強に追われています(出所:文部科学省「子どもの学習費調査2018年」)。

 このように、我が子が伸び伸びと夏休みを楽しく過ごし、新しい体験を通じ成長してもらいたいが、(1)周りと同じように勉強や部活を怠ることはできない、(2)自分たちも休みが短く子どもの面倒を見る時間も限られている、(3)旅行やキャンプに連れてゆくまたは送り込みたいが、どのプログラムも高く、公的支援も期待できず経済的に限界がある…こうしたジレンマを抱えている親御さんが多いのではないでしょうか。

夏休み格差を縮めるために
社会全体で親子を支えるフランス

 皆さんの中には、前述したフランスの子どもたちの過ごし方の典型例を見て「これでは金がいくらあっても足りない」と感じる方が多いかもしれません。ところが、実際にはやり方によりかなり節約できます。

 その最大の理由は、歴史的にフランスでは、子どもたちの夏休み格差を縮め、より多くの子どもたちが有意義に過ごせるようにしようとの社会的コンセンサスがあるからです。そのため、国、地方自治体、企業の従業員委員会、家族手当基金、共済団体、社会支援NGOなど、社会全体で財政支援も含め支えています。