このように大人が子どもたちの夏休みを大事にする背景には、次の二つの要因があります。

 一つは歴史的な経緯です。170年前にナポレオン3世が初めて有給休暇10日を上級公務員に与え、1936年にはそれが大衆化し、バカンス文化が国民全体に浸透します。従って、今の子どもたちの両親や祖父母はもとよりご先祖様も、自らのバカンスを通じてその素晴らしさを体感しているからです。

 二つ目は、フランス革命で生まれた平等と友愛というフランス共和国の標語です。皆が平等にバカンスを有意義に過ごす権利を持つ。その実現に向け皆で支え合おうということです。

 法的にもこの二つの精神が反映されています。1946年憲法は「すべての人、特に子ども、母親、高齢の労働者に休息と余暇を保障する(前文11項)」としています。また、1998年7月制定の「排除との戦いに関する法律」は、「文化、スポーツ、休日、レジャーを生涯にわたり全ての人が平等に活用できることは、国の目標であり、有効な市民権行使の保障を可能にする(第140条)」と休日を過ごす権利を国家目標として規定しています。

夏休みの数カ月前から
親は子どもの預け先を準備

 フランス人は、平均2週間の夏のバカンスに出かけます(主に7~8月)。従って、一般的に子どもも親と2週間のバカンスを過ごしますが、残りの6週間は親とは別に何かの活動をする必要があります。親の7割がフルタイムの夫婦共働きのため、その間、子どもの面倒を見るのが困難だからです。

 そこで親としては、この間に我が子(特に小学生以下)を預かり成長につながることを、1円でも安く提供してくれる人や団体がいると助かるわけです。そのため、夏休みが始まる数カ月前からさまざまな準備をします。

 まず、家族親戚を頼りにできそうな人は、祖父母や叔父叔母などと相談します。彼らが、近所に住んでいるのか遠方なのか、別荘を持つか否か、旅行に連れて行ってくれるか否かにより過ごし方は異なるものの、何らかの形で数日でも預かってくれると親は助かります。

 しかし家族とはいえ、そう長く世話になる訳にはいきません。また、我が子を預けられる家族親戚がいない夫婦もいます。

 そこで多くの親たちが世話になるのが、余暇教育センター(Centre de loisirs educatif )とホリデーキャンプ(Colonies de vacances)の二つを筆頭に、国、地方自治体、企業の従業員委員会、家族手当基金、共済団体、社会支援系NGOなどが財政も含め支援する各種プログラムです。