日本の子どもの幸福に
必要な大人の価値転換

 ご存じの通り、日本人の幸福度は世界54位で、他の先進国と比べるとかなり低い状況です(出所:国連・世界幸福度調査2022年度)。また、自分自身への満足度、職場や学校生活への満足度 自国社会への満足度も、先進7カ国の若者比較調査では最低です(出所:内閣府、平成30年「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」)

 これまでお伝えしたように、子どもにとって夏休みは非日常的な環境に身を置き成長する絶好の機会です。それがわかっていても、多くの親子がそれを実現できません。

 その根本的な原因は、多くの大人たちが、今や時代錯誤でガラパゴス的なキャリア観や教育観を持ち続けていることです。その前提にあるのは、人を肩書で判断や評価する肩書信仰です。どの学校に行ったか、どの職業に就くか、どの会社に勤めているか、どの役職についているか、正社員か非正規社員か、どのエリアに住んでいるかなどです。その結果、学校の成績や偏差値を重視した受験教育システムは、いまだに脈々と生き続けています。

 世界に目を転じると、VUCA(先行き不透明で、将来の予測が困難な状態)が進行する中、サステナブル社会への転換、そのための既存の社会・経済・政治システムの創造的破壊が進みつつあります。

 従って、大人たちの役割は、子どもたちをこうした潮流の中で強く生きられるようにしてあげることです。戦後の高度成長期から続く古びたレールに乗せることではありません。欧米を中心に世界では既にそうですが、日本でもこれからは、「どの学校を出たか」という学歴の意味は薄れてきます。逆に重要なのは、「何を勉強して何が得意になったか」です。また、時代が激しく変化しようとも、それに柔軟に対応し「自分は世界のどこでもやっていける」という能力を生涯磨き続けることです。

 まずは、問題の本質であるこの大人の価値観転換が起きずして、夏休みに休めない日本の子どもたちという状況が変わることはありません。逆に、これが起きれば、子どもたちが豊かに伸び伸びと夏休みを過ごすために必要な、経済、財政、制度的な環境も整うはずです。その結果、子どもたちは、幸福度のみならず、職場や学校生活への満足度、自国社会への満足度も高い大人へと成長することでしょう。