再編が進んだ商用車業界
日野自の窮地が拍車をかけるか

 元々、日野自といすゞの母体は同一であり、「東京瓦斯電気工業」という戦前の企業を源流に持つ。かつて乗用車で日野は「コンテッサ」、いすゞは「117クーペ」など名車を世に送り出したという共通点があるほか、02年には両社のバス事業の効率化のために共同出資で「ジェイ・バス」を設立しバス部門の統合を行っている。こうした経緯から、両社の合併論も浮上したほどだ。

 これまでいすゞは、数多くの提携を繰り返してきた。06年に米ゼネラル・モーターズ(GM)との長期提携を解消した後に、一時トヨタと資本提携(06年~18年)。19年にはスウェーデンのボルボと戦略提携、ボルボ子会社の「UDトラックス」を傘下に収めている。

 そして、21年にトヨタと再び資本提携(トヨタがいすゞ株の5.02%を取得、いすゞも同額規模のトヨタ株を取得)したことで、日野自とはライバルでありながらトヨタグループという大きな枠組みの中で共存する「競争と協調の関係」(片山正則いすゞ社長)という新たな局面を迎えた。

 日本の商用車業界は、長らく「大型4社」と呼ばれ、日野自、いすゞ、三菱ふそう、日産ディーゼルの4社で市場を分け合う体制となっていた。しかしその後、日産ディーゼルは日産の傘下から外れたことで07年にスウェーデン・ボルボの100%子会社化となり現在のUDトラックスとなったほか、三菱ふそうは05年に独・ダイムラーの傘下となるなど再編も進んだ。日本のプロパー企業である日野自といすゞに対し、外資の三菱ふそうとUDトラックスという色分けが明確になった時期だ。

 ただ、前述の通りその後UDトラックスはいすゞの傘下となったため、現状ではいすゞ(+UDトラックス)・日野自・三菱ふそうが商用車の国内3大グループとなっている。

 そもそも、自動車業界では、カーボンニュートラルをはじめとするCASE対応が喫緊の課題となるなど、経営はかつてない難局にある。一社では到底賄いきれない巨額投資の必要性から、自動車業界ではさまざまな分野で合従連衡が進んでおり、商用車も例外ではない。